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□毒姫と変態王子
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「おはよ、沙耶♪
今日も待っててくれてありがとう。」
俺はにこりと沙耶に笑いかける。
沙耶は俺の態度が気に食わないのか
もう一度舌打ちをして俺の方を見た(睨んだ)。
「おはよう、じゃないでしょ?
毎朝毎朝…あんたは何回言えば分かるの?」
「えー、沙耶が早いだけ…「今何時か分かってるの!?遅刻してそんなヘラヘラしてるのあんただけよ!」
沙耶は風紀委員でもないのにいつも校門に立っている。
自主的に…ではなくて、担任に俺の事を頼まれたからであって。
つまり俺が早く学校に来ないで遅刻ばかりしているうちは
沙耶も面倒事を終えられないと言うわけだ。
「そりゃー朝から大好きな沙耶に逢えたら嬉しくて、ね?」
俺は再び沙耶に向かって笑顔を見せる。
沙耶はそんな俺を呆れ顔で見つめ、ふっと笑った。
「…で?
そう言ったら私が喜ぶとでも?」
相変わらず手ごわいお姫様。
昔は口が悪くても、照れ屋だったから顔を真っ赤に染めていたのに。
「それよりも、気易く私の名前を呼ばないでくれない?」
「相変わらず沙耶は釣れないなぁ…。
ま、いっか。教室行こう、勿論一緒にね♪」
沙耶はだいぶ不機嫌に見えたが
構わず俺は沙耶の手を握った。
「!?」
突然の事に冷静な沙耶も驚きを隠せない様子。
そして少し下を向いて俯いた。
あ…もしかして。
「沙耶…照れてr「照れてない!あんたなんかに照れるわけないでしょ!」
俺の言葉に瞬時に反応する沙耶。
鋭い目つきで見られて、正直ちょっと脅える。
でも、ちょっと嬉しかった。
…それは俺がドM気質だからとかじゃなくて。
見えたのだ。
沙耶が長い艶のある黒髪を耳にかけるところを。
昔から変わっちゃいない。
沙耶はこの癖が「照れ隠し」なのだ。
「〜…、離せッ!」
そんなことを考えていると沙耶は耐えられなくなったのか
強引に握っていた手を離し、校舎の方へ向って早足で去って行った。
「…ほんと、素直じゃない。」
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