BOOK

□毒姫と変態王子
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ガラッ



「おー悠斗。今日もギリギリだな。」


「まぁね。間に合えば時間なんて関係ないでしょ。」



教室に入ると大抵誰かが話しかけてくる。

本当は沙耶以外なんてどーでもいいけど
これも人間関係ってやつで、嘘くさい表情を並べながら答えている。



「…あれ、沙耶は?」



教室を見渡しても姿が見えない。

おかしい、もうすぐHRが始まるのに。



「あー…女王様なら担任のとこ行ったよ。
 それも“超”不機嫌な感じで。」



そいつはわざとらしく「超」を強調して答える。

うざいと思ったがそこはあえてスルーした。


ちなみに沙耶はこのクラスの委員長。

だから俺みたいな問題児を任されてしまうってのもある。


女王様と呼ばれているのは
小さい頃の口の悪さが招いた結果なのか、誰かれ構わず毒舌を撒き散らす様子からで
いつ誰が呼び始めたとか、そういうのは分からない。


まあ、一部の男子にそう呼ばれているだけで
女子にはごく普通の呼ばれ方をしている。


…もし沙耶がこのクラス全員から女王様なんて呼ばれてたら
ちょっとどころか、かなり俺はいらついてしまう。



だって沙耶は俺の可愛いお姫様なのだから。



と、それは置いといて。



「ふぅん。原因はほぼ俺だろうけどね。」


「なんだ、自覚してるの。」



聞きなれた声に振り向く。

後ろには意味深な笑みを浮かべ、
担任に頼まれたであろう書類の一番上の一枚をくしゃりと曲げている沙耶が居た。


ああ、これはかなりキてる。



「まあまあ落ちつけって、沙耶ちゃん。
 そんなに眉間に皺寄せてると、美人が台無しだぜ?」



これまた聞きなれた声。

俺は沙耶の後ろの人物に視線を移した。



「悠斗だけじゃなくて、あんたのせいでもあるのよ、亮。
 もう喋らないでくれるかしら。
 廊下で何度も聞いたから飽きちゃったの。耳障りだわ。」



沙耶は亮に向かって何時ものような毒舌をかました。

亮は苦笑い気味に「りょーかい」と返事をしてそこから喋らなくなった。


西崎亮。彼もまた、俺の幼なじみだ。
沙耶以外どうでもいいと言ったが、こいつだけは別。

男友達で俺が本音を話せるのはこいつだけだと思う。

亮は少々女ったらしだが、友達としては凄く良い奴だ。


また、亮も俺と同じく問題児である。

さっきの沙耶との会話からきっと今まで一緒に居たと思うから
沙耶が担任に呼ばれたのは亮絡みだろう。



「幼なじみ二人を問題児として抱えてるなんて、沙耶も大変だね。」



そんな風に沙耶を煽ってみれば
ふん、と澄ましたように



「まあね。
 全く、そこまで理解してるのに改善出来ないなんて…学習能力がないようね。」



と、沙耶が答える。


そのなんとも言えない勝ち誇った顔に
俺はまたちょっと興奮した。


…何度も言うが、俺はドMではない。



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