短いの

□忘れないで
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「一護。」

やっぱ来たか…。

「なんだよ。」

寝転んだまま、窓際に居る恋次に背を向けて答えた。

「こっち向け。」

「やだよ。」

今は顔を見せたくねぇんだよ。

「こっち向けっつってんだろ?」

恋次は背中を見せたままの俺の肩を掴んで、強引に自分の方を向かせた。

「顔見せろよ。」

「見せたくねぇ。」

両腕を顔の前でクロスして、見せない様にしてたんだけど

恋次に軽々とどけられた。

「なんで逃げんだよ?」

恋次は眉をしかめて、物凄く不安そうな顔をしている。

「お前に気づかれたからだよ。」

顔は見せても目を合わさずに答えた俺に

「は?何言ってんだてめえ…。」

意味が分かんねぇって顔をしながら恋次が言う。

横目で見えるんだよ。

「分かんねぇんなら、ほっといてくれよ。」

恋次の手を振りほどいて、また逃げようとする俺の腹に手を回して

自分の方へ引き寄せた恋次は

「逃がさねぇよ。」

がっちりと俺を抱き締めて耳元で囁いた。

「離せよ!どうせ お前には分かんねぇよ!」

恋次から逃げようと必死でもがく俺は

いつの間にか泣いていて、叫んだ声も掠れていた。

「ぜってぇ離さねぇ。」

「っく…そ…、バカ…れ…んじ。」

「てめえが泣こうが喚こうが、嫌おうが忘れようが、俺はぜってぇ離さねぇ。」

「!!」

片手で腹をがっちり掴まれ、もう片方の手で額を押さえつけられていた俺に

恋次は震える声でそう言った。

忘れ…ようが…?

その言葉に引っかかって、そっと恋次の方を振り返った。

「確かに、忘れてた俺は、そん時のてめえの気持ちを分かってやれねぇよ。
けどな、今のてめえの気持ちは分かってやれんだよ。どんな小せぇ事でも構わねぇ、隠すな。一人で抱え込むんじゃねぇ。」

必死で俺に語る恋次の目から涙が溢れた。
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