短いの

□忘れないで
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「どうすりゃいいんだよ…。どうすりゃ…てめえは笑ってくれんだよ…。」

俺の肩に額を押し付けて泣きながら言う恋次を背中に感じて

ああ…俺は大バカ野郎だ…。

と猛烈に反省をした。

好きな相手の気持ちが分からないくらい

辛いもんはねぇ。

ましてや、その気持ちを隠して無理をしてる所なんて見たくもねぇよな…。

なんで我慢するんだ!
なんで言ってくれねぇんだ!

って 恋次は思ってたんだろうな…。

「ごめんな 恋次。」

腹に回された腕を強く掴んで、掠れた声で謝る俺に

「なんで てめえが謝るんだよ?わりぃのは俺だ。どんな理由であれ、全部忘れちまってたんだからよ。不安で怖かっただろ?すげぇ絶望感だったよな…。」

なんだよ…、ちゃんと俺の気持ち分かってんじゃねぇか

それだけで十分だ。

「恋次、俺 お前が恋人で良かったよ。」

「は?」

突然の俺のセリフに驚いた恋次は、俺を捕まえてた手の力を抜いた。

その隙に身体を反転させて、恋次と向き合った俺は

「もう大丈夫だ。くよくよしねぇ。つーか、俺らしくねぇもんな。」

そう言って自分では最高の笑顔を見せてやった。

「やっと 本当に笑ってくれたな。」

その笑顔を見て安心してくれた恋次は

そのままギュッと俺を抱き締めて

「もう泣かさねぇからな。ぜってぇ離さねぇし、忘れねぇ。」

心の底から絞り出したような

甘く優しい声で言ってくれた。

「俺も、ぜってぇ離れねぇ。お前を信じてずっと傍にいる。」

恋次の背中に腕を回して、胸に頬を擦り付けながら言うと

ふいに身体を離されて、顔を覗き込んで来たかと思うと

優しいキスをくれた。

『忘れないで』

どんな事があっても

俺はずっと恋次の傍に居るから。

『忘れないで』

心の一番奧に刻みこんでおいてやる。

お前は俺が好きなんだってな。

だから

もし また記憶が無くなったとしても

心の中 抉り出してでも思い出させてやるからな。

『忘れないで』



end
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