子育て奮闘記

□里帰り
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子供の成長は、本当に早い。

この間喋り出したかと思ったら

今度は歩き出した。

ハイハイしてた時より動き回るスピードも速くなったし、範囲も広くなったから

目が離せないどころの騒ぎじゃない。

毎日が戦争だ…。

そんなある日

「阿近さんが、咲の義骸作ってくれたぞ!」

恋次が帰って来るなりそう言って、咲を抱き上げた。

「なんだよいきなり。
ただいまが先だろ?」

恋次から咲を取り上げて、注意をすると

「ただいま!」

恋次は、素直に注意を受けて、元気良く挨拶をした。

「で?なんで急に咲の義骸の話なんだよ?」

咲はまだ一歳半で、義骸なんて必要ないはずだ。

なんて思ってたら

「ずっと思ってたんだけどよ。
親父さんに、ちゃんと咲を見せてやりてぇって。」

「あ…」

恋次に言われて気付いた俺は、自分にムカついた。

なんで

今までそんな大事な事に気付かなかったんだってな。

咲の事は、恋次が現世に行った時に

話をしてくれてたり、撮り貯めた写真を渡したりしてくれてた。

でも

産まれる直前に、尺魂界へ来たから

親父にはまだ

咲を抱っこどころか、声すら聞かせてねぇ。

「明日と明後日、非番もらったから現世行くぞ。」

俯いていた俺の髪に、恋次の手が優しく触れた。

「恋次…俺。」

気付けなかった自分が情けなくて

眉をしかめて恋次を見ると

恋次は

「てめえはそれだけ
一生懸命咲を育ててたって事だ。それは、親父さんだってちゃんと分かってっから大丈夫だ。」

優しく微笑みながらそう言ってくれた。

全部お見通しかよ。

「咲。じいちゃんに会いに行くぞ。」

俺から咲を取り上げて恋次が言うと。

「じ?」

初めて聞く単語に、理解できてない咲。

「じいじだ。咲。」

俺が、分かりやすい単語で言ってやると

「じいじ!」

咲は、満面の笑みで叫んだ。

久しぶりに帰る現世の家。

恋次が言ってくれた事で、気持ちが楽になったから

帰るのが楽しみになってきた。

早く親父に咲を見てほしい。
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