▼LD1 短編

□IdiotA
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――GD本部


「って言われたんだぜ…ひどいと思わねぇか?」
「ハッハハハハァッ!」
あれだけルキーノに言われたとはいえ我慢できるほど俺も良い子じゃない。あれから俺はカポ室をこっそり抜け出し、のこのことGD本部に転がり込んできた。反抗期なのかもね俺ってば、ワオ。俺は馬鹿でかい椅子に座ったバクシーの膝の上に腰を掛けて背中をバクシーの胸に預けるという体勢のままバクシーを見上げた。
ルキーノのことが嫌いなわけではないが、バクシーの何も知らない癖にあんな言い方をする必要はないと思う。バクシーは本当は優しくて、俺の我儘を聞いてくれる。なんて言っても誰も信じないだろうけど。というか優しいバクシーを知ってるのは俺だけでいいと思っている。独占欲、みたいな。バクシーは誰にも渡したくないし、バクシーの傍に寄れるのは俺だけがいい。
「でもよぉジャン」
バクシーの手のひらが俺の額を覆ってそのまま髪をかき上げられた。そして腹にくる低い声で呟く。
「殺してきた人間の血と脂の臭いが分かるのは、自分もそうしてきた奴にしか分かんねぇもんだぜ」
バクシーが俺の目の前にホイップとチェリーが乗ったアウスレーゼを持ってくる。俺はチェリーを抓んでホイップに齧り付いた。口の中でホイップの甘味に酔いしれていると口の端についたホイップをバクシーの指が拭う。
「…バクシー」
「あン?」
「俺は、俺だけはお前の味方だから。俺は絶対にお前についていくから」
顎を上げて、覗き込んでくるバクシーの目を真っ直ぐ見てそう言えば、バクシーはニヤリと笑う。そうかいそうかいと俺の頭をぽふぽふ撫でられて、何だか適当に流された気分がした。ムッときて俺は腹癒せにアウスレーゼをくいっと飲む。アルコール成分が高いらしく、少しくらりとした。
「ンま、お前は俺のお嫁さんだから、ナ?」
「ンブッ…!な、何言って…!」
「お前この前言ってたろうが。俺はバクシーのお嫁さんになるんだ〜ってなぁ?ハッハハハハァッ!」
「い、言ってねぇ!お前の妄想だ!」
「あーでもドレス姿のお前をオカズにヌいたことはあるぜ?」
「な、なな…ッ!へ、変態!スケベ!馬鹿!」
「へーへー」
こいつそんなこと考えていたのか!?こんな涼しい顔して…!ドレス姿の俺、なんて似合いっこないだろうに。こいつは相当俺を美化して想像しているに違いない。するとバクシーの手が俺の尻に伸びてきて、強く揉まれる。
「ん、ッ…!」
バクシーは俺の肩口に顎を乗せてわざと俺の耳元で喋る。
「イー声だなぁジャン…」
バクシーの指の腹でアナルを押されまくってナカが動く感じがする。俺はバクシーの膝から落ちないように必死に椅子の肘掛を掴んだ。それでも構い無しにずんずん刺激してくるもんだから俺の正直な下半身は密かに兆し始める。チラとバクシーの下半身を見ればこいつもテント張ってやがった。
「ま、て…バクシー…ここは、…ッ」
「いいじゃねぇかヨゥ…この間は随分とひでぇおあずけ喰らっちまったしよ?お前も我慢できねぇんだろ、腰揺れてんぞ」
本当は、本当は、こいつの馬鹿デカいちんぽを早くぶち込まれたい。ぐちゃぐちゃに、何が何なのか分からないくらい犯して欲しい。俺だってあの時おあずけ喰らって凄く辛かった。バクシーだって同じ気持ちだ。でもここはGD本部で、仮に人が入ってきたときのことを考えると待ったが掛かる。ズボン越しに指が入ってきそうになり理性を飛ばしかけた頃に、事態は起きた。
「ボス!」
突然開けられた扉にバクシーは咄嗟に手を離した。力がうまく入らなかったため俺はそのままバクシーの胸に凭れる格好になってしまった。派手なタトゥーをした構成員が血相を抱えて部屋に入ってくる。その際にその構成員は俺を見て訝しい顔をした。
…ん?ボス?
「シカゴで線路爆破事故がありました!線路はほぼ全壊らしいです!」
鉄道事故、だと?
どういうことだと俺はバクシーを見上げると、バクシーは不機嫌極まりない無表情で構成員を見る。
「…テメェここが何処か分かってんのケ」
地響きのようなバクシーの声に構成員はさっと顔を蒼くする。構成員も緊急事態でバクシーに報告することで頭がいっぱいだったんだろう。この構成員は見るからに下っ端の下っ端だ。緊急とはいえバクシーの個室に立ち入れるような立場じゃない。…鉄道事故も気になるがこいつ今ボスって呼ばれてたよな?
「ば、バクシー…」
「あン?」
「お前、今何て呼ばれてた…?」
バクシーは先ほどの不機嫌極まりない表情を他所にやって得意げにニヤリとした。
「ボス」
ボス…?こいつが…!?
「お、おいお前マジかよ!ハァ!?ボス!?お前が!?!」
「ンだよミーミーうっせぇなぁ…俺がボスじゃ悪いのケ」
「ち、ちげぇよ!」
俺はバクシーの手を取ってバクシーと向かい合った。
「Congratulazioni!お前よくやったなぁ…!今度お祝いしてやるよ!」
バクシーがきょとんとしている意味が分からないが、バクシー、さすが俺のバクシー!やりやがったこいつ!遂にGDのトップに上り詰めたんだ…!
「あ、あのボス…この方は…?」
顔を蒼くしたまま恐る恐るバクシーに聞く構成員の姿が可哀想でならん。こいつがトップだったら本当に大変なんだろうなぁ、ソルジャー共は。バクシーは俺を再び元の体勢に抱え直して、俺の手に指を絡めて得意げに鼻を鳴らす。
「俺のネコだ」
ね、ネコじゃない!でも彼女じゃない!…彼氏でもない!…じゃあなんだ…?
「で?物資供給の状況は?」
「あ、それが…アメリカ全体に影響が及ぶほどの大惨事でして…」
「ハッハァン…」
バクシーはこめかみに人差し指を添えて肘掛に肘をついた。これはバクシーが考えるときの体勢だ。こうしているときは何を言おうが何をしようが反応を示さないのを俺は知っている。そわそわとしている構成員に向かって俺は、まあ落ち着けとウィンクをした。頬が赤らむところからするとこいつは踏んできた場数が一つの掌で足りるくらい、相当ガキらしい。バクシーは溜息をついた。
「ンま、俺がおっ始める前にお偉いさん方から命令書が来んだろ。…はー…面倒起こしやがって」
「は、はい」
「その爆破したチンカス野郎はお縄についたのケ?」
「それが足取りが掴めないらしく…恐らくルゥが処理に踏み込むと」
「フゥン…そこまで出っ張ってきやがったか」
ルゥは俺らの間でも有名なマフィアの男だ。最近は妻と穏和な生活をしていると聞いたが、そいつが出て来るとなると本気でこの事態はやばいらしい。さらに言うとアメリカは今絶賛大恐慌中で政府が線路を修理する金もない。となると裏で稼ぎまくっている俺らマフィアとギャングの力を借りるしかないというわけだ。都合のいい政府の犬には毎度ながら唾を吐き捨てたい。
俺も事態収拾のためにCR:5本部に戻ることにした。次会えるか分かんねぇけど今はそれどころじゃない。互いに落ち着いたら連絡をすると口約束をしてバクシーと別れた。


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