妄想列車3号
□ヒロさんの大いなる災難
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事情をいろいろ聞かれ、解放されたのが午後2時。自宅へ帰って軽く昼食を摂った。
「野分。すまなかった、ありがとう」
「ヒロさん・・・俺が間に合って本当に良かったです。ヒロさんが連れ去れているのを見た時、心臓が止まるかと思いました」
「すまん」
「謝らないでください。ヒロさんは悪くないです」
「でも、俺の不注意だから」
「いえ。いつまでも包帯をさせていた俺の責任です」
「包帯は仕方ねぇ事だろ」
「あ・・・あの・・・え〜と・・・俺が悪いです」
「?????・・・??・・・まぁ、こうやって無事にここに帰って来れたんで良しとして・・・・・病院はいつ行こうか」
「・・・・・え〜っと」
「俺が一人で行っても構わねぇーんだろ。お前とわざわざ時間合わさなくたって、お前が働く病院に行くんだし」
「それはそーなんですけど」
「それとも俺一人じゃ何か問題があるのか」
「いえ、そんな事は・・・ないです」
「・・・・・野分」
「・・はい」
「俺に何か隠してるか」
「・・・・・」
「野分」
「はい」
「もしかして、この傷。治らないとかなのか?」
「いえ、大丈夫です」
「大丈夫って、何が大丈夫なんだ?」
「えーーっと」
「今日、本当は包帯を取る予定だったんだよな」
「はい」
「んじゃあ、もう治ってるって事だよな」
「はい」
何故か俺と目を合わせようとしない野分。
俺に何か隠してる証拠だ。
まさか・・・傷跡が酷いとか・・・いや、そんな事は俺は気にしねぇーし、野分も気にする事はねぇーんだし。
それとも傷跡が残るだけじゃなく、顔そのものが変形してしまったとか。何か特別なウィルスに感染してしまったとか。
それで、俺の顔を見たくなくて、傷が治ってるにも関わらず包帯を取らずにいたとか。
そして、尚且つ変な男に襲われて、ウザ過ぎる俺に愛想が尽きて別れようとか考えているのか。
だったら・・・どうしよう・・・俺から別れた方がいいんだろうか。それとも・・・・・
「あの〜ヒロさん?」
それとも・・・そーっと居なくなった方がいいのか。
「ヒロさん、どうかしましたか?」
だけど、ここまで傷の手当てをしてくれて・・・そりゃあ野分は医者だからな。患者を治すのが仕事だし。
「ヒロさん、ヒロさん、ヒロさん」
じゃあ今日の事件はどうだ?俺を助けてくれたぞ。・・・・・目の前でさらわれるのを見たら、俺じゃなくても助けるような奴だよな野分は・・・。
俺はやっぱり、野分の足手まとい・・・なのか?
「ヒロさん? ヒロさん!」
野分に肩を揺すられて、目の前の野分を見た。
「何だよ」
「ヒロさん、何考えてたんですか」
「・・・この包帯の下の俺の顔は、もう人前に出せないぐらい酷いのか?」
「いえ・・・何故です?」
「そーなんだろ? 一生この包帯が取れないくらい醜い顔になってるんだな」
「何言ってるんですか、そんな事ないです」
「俺の包帯を外した顔を見たくねぇーんだよな。だから外してくれねぇーんだろ」
「違います!そんな事ないです!」
「嘘をつくな!本当の事を言え野分!
俺はどこか遠い誰もいない所へ行って、一人寂しく生きていく。誰にも迷惑をかけずに生きていくんだ」
「ヒロさん!落ち着いてください」
「落ち着くのはおまえの方だ野分。こんな世話のかかる俺なんか相手にせずもっと自由にしろ。俺は出て行く。二度とお前に迷惑かけねーから。だから俺から手を離せ野分」
「嫌です。嫌です!ヒロさん、ヒロさん。俺はヒロさんとは別れません。一生ヒロさんと一緒にいます」
「のわ」
「ヒロさん、ごめんなさい。俺のせいです」
野分は何故ずっと謝ってるんだ?
やっぱり、この傷は・・・。
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