F×S

□チームメイト
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あれから何度もサッカー部の奴らとは衝突を繰り返し、3年にも目をつけられた。
だが佐久間は必ずオレの味方をした。
サッカー部の奴らに何を言われても、3年に痛め付けられても、佐久間はオレの側にいてくれた。
そのうち佐久間の思いが通じたのか、サッカー部の奴らとは打ち解けられた。
3年の事も落ち着いてきた。
安定した"普通"の毎日が送れるようになった、が。

(暇だ…)

サッカー部が誰もいないクラスでは、なかなか"友達"と呼べる人物は出来なかった。
というか、話し掛けてくる奴がいない。
気がつけば休み時間の度、佐久間のクラスに行っていた。
チャイムが鳴ると、即教室から出て2つ先の佐久間のクラスに走る。

「佐久間!…」

教室には誰もいなかった。
照明も消されいて、窓から差し込む僅かな明かりしか無い薄暗い教室。
人気の無い教室ではやたら声が響いた。

「そっか…次体育だっけ…」

何となく佐久間の机に座ってみる。
ペンギンの落書きがあり、引き出しから筆箱のキーホルダーがぶら下がっていた。

(オレと同じ位置の席…)

2つ後ろの教室の、同じ位置がオレの席。
ここからは窓の外がよく見える。

「あ…」

グラウンドに佐久間達がいた。
佐久間の周りにはサッカー部の奴らがいて、楽しそうに話している。
体育は2クラス合同で行うため、佐久間と源田、辺見に咲山等、サッカー部のほとんどの奴らがいた。
アイツらと、何、話してんだろ…。


――――――――――――――
――――――


部活が終わり、それぞれ帰路につく。
オレは佐久間、源田、辺見、咲山と同じ方向だ。
4人はオレの一歩前を楽しそうに話ながら歩いている。

「だから、世界史の時に言っただろ?」
「すまない、昼休みの後はどうも睡魔が…」
「しっかり」
「咲山が言えるか!?」
「そういえば授業中辺見倒れたけど、どうしたんだ?」
「あれは…」

全部オレが知らない事ばかり。
当たり前だ、オレはその場所にいなかったんだから。

「…不動、どうした?
 さっきからだんまりになってるぞ」

クルリと振り向いた佐久間と、イナズマジャパンにいた頃と同じように話したい。
一緒にいた時間とか、何も気にせずに普通に接したい。
だが、オレとコイツらじゃ話す内容も、何もかも違う。
話したくても、何を話せばいいのかわからない。
せめて、佐久間と同じ教室にいられたら…。

「…と…いい…」
「?」
「佐久間と、同じクラスがいい。
 佐久間と…一緒に…」

突然フワリと温かい何かがオレの身体を包み込んだ。
気がつくと佐久間に抱きしめられていた。
ぎゅっと優しく、離れないように。

「佐久間…?」
「大丈夫、何も変わらない。
 オレはイナズマジャパンの時と同じ、佐久間次郎だ。
 何も変わらないよ」

そうか…同じ、なのか…。
オレも佐久間も、何も変わってないんだ。
同じ"仲間"なんだ。

「不動」

佐久間がオレから離れ、ニコリと微笑む。
綺麗に、優しく。

「帝国に来てくれてありがとう。
 これからもよろしくな」

何て返事すればいいかわからなかったから、とりあえず頷いた。
そしたら、佐久間が嬉しそうに笑ってくれた。



チームメイト

(その直後、言うまでも無く辺見達がからかってきた)
(もちろん辺見にジャッジスルーを喰らわせた)










クラスに友達いないとこうなるよね。
友達いてよかったよ。
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