イナズマジャパン

□悪ノ帝国 〜第3章〜
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翌日、コウガは誰にも会いたくないと言うサクラを半ば無理矢理外に連れ出した。
そして庭に待たせていた自分の犬を見せてあげた。

「コイツの名はベルと言います。
 オレの犬です」
「コウガの、犬?」

茶色の大きな生き物を、ベール越しではあるが、マジマジと見つめるサクラ。
犬は初めてなのだ。

「犬っておっきいのね」
「小さいのもいますけどね。
 大きさも種類もたくさんあるんです」
「触っていい?」
「どうぞ」

怖々ではあるが、ベルの頭を撫でる。
ふわふわとした手触りに、サクラは自然と笑顔になっていた。

「ふわふわしてる…あったかい…きゃっ!?」

突然ベロリと舐められ驚いたが、すぐにまた笑顔になった。
どうやら気に入ったようだ。

「お気に召しましたでしょうか?」
「うん!
 ありがとうコウガ」

楽しそうな様子を見て、昨日の件から立ち直った事を確認したコウガは、サクラに笑顔を返した。

(オレに出来るのはこの程度。
 でもこれでサクラ様が救われるのなら…。
 この方を守る。
 そのためならば、オレは悪にだってなってやる!)


――――――――――――――
――――――


サクラの顔を見る事は叶わないと悟ったテルルドは、昼食が終わるとゼウサレムへと戻る事にしたらしい。
見送りに来たアキラに、サクラに渡してくれと可愛らしいリボンを渡した。
サクラの髪を結うための、水色のレースのリボン。

(サクラの髪には似合わないなぁ…)

アキラは感謝の言葉を返しながら、そんな本音を漏らしそうになった。
もちろんそんなヘマはしなかったが。

「じゃあ頼んだよ、召使くん」
「…畏まりました。
 では、お気をつけて」

馬車に乗り込み、笑顔で手を振るテルルドは、ゼウサレムへ戻る前にエレクトルへ向かうよう命令した。
エレクトルの王子とテルルドは友人関係なのだ。
その他、商人等にも友人がいる。

「久しぶりに皆に会いたくてね」

先程まで一緒にいた婚約者の振る舞いや、時折見えた滑らかな褐色の肌を思い出しながら、テルルドは外を眺めた。
後ろへ流れる景色を見て、これらがいずれ、自分の物になると思い、思わず笑いそうになったのを何とか抑える。
そう、近い将来、テルルドは全世界の実権を握る事になるのだ。

「美しい妃に、絶対的な権力…。
 未来の僕にピッタリだね」
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