イナズマジャパン

□悪ノ帝国 〜第3章〜
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エレクトル王国の町外れにある小さな港。
そこにひっそりと建っているみすぼらしいが大きな教会。
少し黒ずんだ立派な鐘が3回鳴り響いた。
それと同時に白い高貴な服装に身を包んだ、金髪の美しい少年が馬車から現れた。

「久しいな、テルルド。
 …今はテルルド様と呼ぶべきか?」
「止してくれユーリ。
 いつも通りテルルドでいいよ」

教会の修道士の格好をしたユーリと呼ばれた少年は、悪戯っぽく笑った。
しかし眼鏡のせいか、その少年本来の雰囲気のせいか、その笑顔も大人びて見える。
修道士の格好をしているが、ユーリはエレクトル国の王子で、後継者として期待も大きい。
エレクトル国には王の正統後継者は5歳〜15歳まで教会で修道士として育てられる、という習わしがあり、ユーリも例外無く参加している。

「ガゼットやハルカは元気かい?」
「ガゼットは相変わらず。
 ハルカは日に日にお転婆が増してるようだ」
「元気そうだな」

ハルカとはユーリの妹である。
青みを帯びた黒髪を肩までの長さに揃えた元気な女の子で、兄のユーリをも気圧される程気が強い。
可愛らしい容姿とその気の強さをテルルドは気に入っている。

「そういえば急にお前が来るとは珍しいな。
 どうしたんだ?」
「あぁ、ついさっきまでシルベストにいたから」
「し、シルベスト王国か!?」
「そう、シルベスト王国。
 僕さ、サクラ王女と結婚しようかなって思ってるんだ」
「はぁ!?」


――――――――――――――
――――――


テルルドがユーリと会っている頃、アキラは紅茶の葉を買いにエレクトル国へ来ていた。
行き着けの店でいつものブレンドを注文し、出来上がるまでの時間、別の店を覗いて暇を潰していた。
すると後ろの方が騒がしくなり、振り返ると不機嫌な少女と困った青年がウロウロしている。

「だからちゃんと調べてって言ったじゃないですか!」
「も、申し訳ありません…」
「どうかしましたか?」

アキラが声をかけると、少女はニコリと微笑み会釈した。
その振る舞いと服装から、アキラは身分の高い人物だと判断した。

「この辺に美味しい紅茶を扱っているお店があると聞いたのですが、どのお店かわからなくなってしまって…」
「あぁ、それなら多分こっちです。
 案内しましょう」

5分弱の道を3人でお喋りしながら進む。
少女の名はハルカというらしい。
ハルカはアキラの周りにはいないタイプの人物で、少し話すだけでもかなり新鮮だった。
店に着くと、アキラが注文したブレンドが出来上がっていた。
それを受け取り、アキラはハルカと別れた。
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