イナズマジャパン

□悪ノ帝国 〜第4章〜
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コウガの杞憂は現実のものとなってしまい、エレクトル国との戦争は日増しに激しさを増していった。
しかしサクラがこの事を知ったのは、城にいたはずのコウガの父親達が傷だらけで帰って来た時だった。
そこで軽傷の兵に詳しい事を尋ね、ようやく全てを理解した。
だが既に戦争は後戻り出来ない状況にまで来てしまっていた。
暗い部屋の中、静かに自分を責め続けるサクラ。
その姿が、アキラとコウガを苦しめる。

「サクラ、おやつの時間です。
 本日のおやつは…」
「ごめんなさいアキラ。
 今、食欲が無いの」
「しかし、今朝からほとんど食事に手をつけてないじゃないですか。
 少しは食べないと、お体を壊します」
「ごめんなさい…」

テーブルにサクラの好物であるブリオッシュを置いて部屋を後にするアキラ。
コウガに護衛を任せ、アキラはエレクトル国に向かった。


――――――――――――――
――――――


シルベスト国とエレクトル国の国境の近くにある武器屋スティール。
そこはまだ戦火が及んでおらず、以前と同じ風景が存在していた。
中に入れば、いらっしゃい、と聞き慣れた声。

「お、敵襲か?」
「冗談に聞こえない冗談は止してくれ」
「悪ぃ悪ぃ。
 で、何?
 シルベスト国の召使が武器の発注なんかしに来たの?」
「…お前、違うってわかってるのに聞いてるだろ」
「あら、怒った?」

ケタケタと笑いながら暢気にお茶を出すガゼット。
アキラは深い溜息を吐きながら、友人の無事を実感した。
どうやらシルベストの兵は、青い髪の女性を無差別に殺しているらしい。
ガゼットは中性的な顔立ちをしており、よく女性と間違われる。
しかも髪の色は青。
逃げ回る人の中で、ガゼットが狙われてもおかしくはない。

「お前、自分が殺られるとは思わねぇわけ?
 戦乱の中じゃあ、髪の色だってわかりづらいんだ。
 そんなに長く伸ばしてたら…」
「切ったって一緒だろ?
 それにここまでは被害来ないだろ」
「お前…!」

まぁまぁ、とガゼットが言うと、アキラは再び深い溜息を吐いた。
ガゼットがそう簡単にやられるような奴じゃないと、アキラだってわかってるのだ。
だが、つい先日もエレクトル国の精鋭である"雷の騎士団"にいた女性が2人殺されている。
いつ、どこでガゼットが狙われても不思議じゃない。
そう思い、もう一度溜息をつくと、後ろでドアが開く音がした。

「おーいらっしゃい。
 久しぶりだな」
「あぁ、久しぶりだ」
「そうだ、紹介するよ。
 コイツはシル…召使のアキラだ。
 アキラ、この人はユーリ。
 港の近くにある修道院の見習い修道士なんだ」
「ども…」
「よろしくな」

2人はアキラの服装でシルベスト国の者とバレるのではと冷や冷やしたが、ユーリがそれに気づく事は無かった。
しばらく話すと、アキラもユーリも完全に打ち解けていた。
楽しくてつい話し込んでしまい、気づけばサクラの夕食の準備をしなければいけない時間になっていた。
ユーリも帰らなければならないようで、お喋りはお開きになった。

「じゃあなガゼット、ユーリ。
 また来る」
「またな2人共」
「おー、またな〜」

また、会う事が出来れば、だが。
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