イナズマジャパン

□悪ノ帝国 〜第3章〜
1ページ/4ページ

晩餐が終わり、テルルドがサクラをテラスへ誘い、甘い言葉を囁いていた。
しかしサクラは一言も返さない。
いや、正確には返せないのだ。
王宮内の人間以外と口を聞く事すら許されないから。

「君って意外と頑固だね。
 声くらいいいじゃないか。
 話くらいしておくれよ」

そう言いながら、テルルドはさりげなくベールを捲ろうとした。
ギリギリでその手から逃れたサクラは、嫌々と小さく首を横に振る。
その様子を陰から見ていたアキラは、思わず身を乗り出した。
侵入者の見張り兼、2人の護衛を任された兵士の中にコウガがいると知ったアキラは、こっそりコウガの後を着いて来たのだ。
途中でコウガにバレたものの、無理を言って同行させてもらっている。

「こらアキラ落ち着け!」
「落ち着いてられるか!」
「頼むから静かにジッとしといてくれって見つかるから!」

何とかアキラを落ち着かせ、見張り(という名の覗き見)を再開。
周りが静かなせいか、2人の位置からもテルルドの声は聞こえていた。

「そういえば、君についての面白い"噂"を聞いたよ。
 君、民衆から「悪ノ娘」とか呼ばれてるんだってね。
 ねぇこれ本当?」

好奇心が強いのか、こちらの内情が知りたいのか。
やたら突っ込んだ話をするテルルドに、サクラは思わず身構える。

「民衆から全てを奪い、自分は贅の限りを尽くす。
 気に入らない者は即刻死刑。
 これ、本当なら君は悪魔だよ?
 正しく「悪ノ娘」ってわけだ」

テルルドの話は止まらない。
まるで、サクラに今までの罪を再認識させているかのように。

「確かに絢爛豪華な王宮だ。
 シルベスト国の権威を象徴しているかのようにね。
 でもそれだけ。
 この城からは権力は感じられても、愛国心が感じられない。
 誰もこの城を、この国を愛してない。
 そんなんじゃ、国は治められないよ?」

テルルドの言葉の1つ1つがサクラの胸に突き刺さる。
サクラは権力の全てを、周りの大人達に奪われてしまった。
それを奪い返せないまま、現在まで過ごしてしまった。
その罪の重さを思い出してしまったのか、サクラはその場を走り去っていった。
アキラ達が急いで追ったが、サクラが部屋の鍵をかけてしまっていたため入れず、微かに聞こえる泣き声を聞く事しか出来なかった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ