イナズマジャパン

□悪ノ帝国 〜第4章〜
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テルルドの突撃訪問から約1ヶ月。
シルベスト王国にゼウサレム国から使者が来た。
手紙だけを渡し早々に引き上げた使者に違和感を感じながらも、宰相は手紙に目を通した。
するとみるみる血の気が引いていき、急に王宮内を何か叫びながら走り回った。

「た、大変だ!
 テルルド様が婚約を破棄なされた!」
「テルルド様が!?」
「なぜ急に…。
 見間違いじゃないのですか?」
「そう思うなら自分の目で確かめてみろ!」

ガヤガヤと騒がしくなる王宮内。
この事はすぐにサクラ達の耳にも入った。
しかし元々テルルドが勝手に言い出した婚約のため、サクラは「そう」とだけ返事し、紅茶を口に運んだ。
サクラにとって、テルルドとはその程度の者なのだ。

「いいのか、サクラ?」
「テルルド王子が別の女性を選んだ。
 それだけでしょう?」
「だが…」
「私には関係無い事よ。
 それよりアキラ、今日のおやつは何?」
「今日のおやつはアップルパイでございます」
「…アキラって敬語似合わないよね」
「余計なお世話だ!」

顔を赤くしながら言うアキラに、小さく笑うサクラ。
その幸せな時が、奪われる日が来る等夢にも思わずに。


――――――――――――――
――――――


コウガがアキラを呼び出す事は無いわけじゃない。
しかし急を要する内容で無い限り、自分が赴く事が多い。
そんなコウガが人を使ってアキラを呼び出した。
ただ事じゃない事は明らかだ。

「先日のテルルド王子からの婚姻破棄の手紙に書いてあったんだ。
 エレクトル国の青い髪の女性にテルルド王子がご結婚を申し込んだと」
「あの女好きが…」
「こら、そんな事言わない。
 ゼウサレム国は海に囲まれた孤島だ。
 次期王として、大陸に領土が欲しいと思ったんだろ」

エレクトル国に比べ、シルベスト国は道や下水道が整備されており、貴族や商人も多いからか貧困階級の者を除けば経済も安定している。
それにシルベスト国の広大な土地は、まるで要塞のように森が囲んでいるため、他国から攻め込まれる事がほとんど無い。
物の流通のために、数箇所森を切り開いて道を整備しているが、馬車が1台ギリギリ通れる程度の細い道で、かつ複雑に曲がりくねっているため、兵が大砲なんかを運び込む事が困難なのだ。
孤島の王族が領土として欲しがるのも無理は無い。

「しかし青い髪の奴か…。
 あそこはシルベストと同じで多民族国家だからな〜」
「まぁ、まず見つからないだろうな」
「どうしたんだよ、一体?」
「いや…オレの杞憂だと思うんだが、王宮内で不信な噂を聞いてな」
「噂?」
「テルルド王子がご婚約を申し込んだ青い髪の女性を見つけ次第、始末すると…」

これまでこんなに心配性なコウガの杞憂であってほしい、と心から祈った事があっただろうか。
2人がサクラにこの事を伝える事は無かった。
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