リクエスト

□VAMPIRE
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オレが初めてそれを見たのは真・帝国だった。
あの時オレは、それを見た途端動けなくなったのを覚えている。
別にビビったわけじゃない。
ただ、見とれてしまったんだ。

小鳥遊の鮮血を恍惚とした表情で飲み、オレに向かって妖艶な笑みを見せた佐久間次郎に…。

「さ…くま…?」

小鳥遊の意識は無いようだ。
さっきからピクリとも動かない。
唇の端から小鳥遊の血を零す佐久間は、もう一度小鳥遊に向き直り、顔を近づけた。
何をしたのかはわからないが、すぐに立ち上がり、零れた血を拭う。
そして…瞬きをしたら佐久間はオレの目の前からいなくなっていた。

「佐久間…!?」
「何?」
「ッ!!?」

いなくなったと思っていた佐久間は、オレの隣にいた。
あの一瞬で。
オレが硬直してしまっているのに気づいた佐久間は、可笑しそうにクスクスと笑っていた。

「あーぁ、見られちゃったな」
「お、前…一体…」
「見てわかんない?」

クスクスと笑う、嗤う。
本当はもうわかってる。
でもそれを信じたくない。
認めたくない。

「わかってるんだろ?」
「はっ、こんな冗談「怖いのか?」

佐久間は今にもオレを噛み殺しそうな、でもどこか悲しげな目をしていた。
右の人差し指をオレの首筋に軽く突き刺す。
反射的に身体を強張らせたオレに、佐久間は「ばーか」と言ってその場から消えた。
文字通り、煙のように。
心臓がやけにうるさい。
まるで全力でグラウンドを走り込んだ後みたいだ。
いや、それより質が悪い。
あんな清々しさは無い。
佐久間の事が怖い?
馬鹿を言うな。
お前なんかを怖がるオレじゃない。
じゃあ何でオレは…?

「佐久間…」

本当に綺麗だと思った。
血を飲む佐久間が。
ただ、震えるくらい綺麗で、怖いんじゃなくて…。
また、あの佐久間に会いたい。
そう思ってしまった。
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