F×S

□タイムカプセル
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寒いし暗いし、第一ここどこだよ?
見た事無い景色と、もうすぐ消え失せる太陽。
一気に下がった気温が容赦無くオレの肌を刺す。
そしてそんな気候なのにも関わらずかなり薄着なオレ。
なぜこうなったのか、原因は約1時間ほど前に遡る。


――――――――――――――
――――――


不動と喧嘩した。
それ自体はいつもと同じだが、今日のは違った。
…オレは悪くない。
悪いのは全部不動だ。
確かに突っ掛かったオレも悪い。
でもだからって、「もう二度とオレの前に現れるな」だなんてさ…。
ちょっと酷過ぎる…。

「不動の、ばぁーか…!」

で、こっちも頭にきて、脇目も振らずに飛び出して来た。
途中で涙が止まらなくて、もう全部がぐちゃぐちゃになって、わけがわからなくなった。
走って走って、気がついたら知らない場所。
完全な迷子だ。
何も考えずに走り続けたせいで、帰り道もわからない。

「うぁぁもう!
 何でオレがこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!?
 これも全部不動のせいだ!」
「勝手に人のせいにすんな」
「!!?」

無いはずの返答に驚いた。
声の方を向けば、そこには知らない大人が1人。

「あ、えぇ、と…?」
「勝手に人のせいにすんなって言ってんの。
 わかる?」

もしかして、この人の名前も「ふどう」なのだろうか?

「あ、す、すいません。
 貴方の事じゃなくて、オレの知り合いの事だったんですけど…」
「んな事聞いてねぇよ」

この人、喋り方や仕種まで不動そっくりだ。
何か無性にイライラしてくるな…。

「お前さ、どうせ道に迷ったんだろ?
 なら着いて来いよ」
「え、ちょ、ちょっと!?」

突然腕を掴まれて引っ張られる。
かなり力が強い。
手を振り解こうとしても、全然歯が立たない。
そのまましばらく歩かされていると、気づけばオレの家の前。

「な、何で…!?」
「何でって、そりゃあ…」

クスリと笑ったその人は続きを言わずに、まるで自宅のように慣れた手つきでオレの家に上がり込んだ。
オレの家の造り、場所を全て把握しているのか、迷わずにオレの部屋に入る。

「ちょ、何なんだよお前!!」
「まだわかんねぇのかよ?」
「何が、ッ!?」

急に腕を引かれ、ベッドに投げられる。
ボフンと音を立てて、派手に背中からダイブさせられた。
起き上がろうとすると、被さるようにしてその人がオレをベッドに押さえ付ける。
そしてオレがよく知ってるアイツと同じような笑みを浮かべ、

「オレだよ、オーレ。
 不動明王、お前の恋人の」
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