F×S

□甘えと幸せ
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オレが佐久間の家から引っ越して(独立して?)早2年。
最初はよく連絡を取っていたが、今ではほとんど無くなった。
システムエンジニアをやっているオレは、引っ越してから急激に視力が悪くなった。
佐久間の家にいた頃は、仕事が一段落したくらいに佐久間がひょっこりやって来てたから、それが適度な休息になっていたのだろう。
視力なんか考えた事も無かったのに、今じゃ本も読むのも1時間が限界だ。
歳取ったな〜とか認識させられて泣きたくなる。

「あ゙〜目がヤバい〜」

あと少しでこの仕事は終わるが、もう無理だ。
目が痛い首も痛い、ついでに肩も凝った。
もう3時間以上同じ体勢なんだ、仕方ない。

「コーヒー…飲みたい…」

お湯を沸かすのが面倒臭い。
缶コーヒーを買って来るも面倒臭い。
つか動くのも億劫だ。
もうダメだな、歳だ。
あぁ栄光と名声の中にいたあの輝かしい現役時代のオレはどこに行った。
つい最近まで近くにいなかったか?

「つかオレいくつだよ?
 まだ24だろ?」

とりあえず冷たい濡れタオルを目の上に乗せ、ソファーに横になる。
そういえば、佐久間のトコにいた時は、徹夜明けにはよくこうして休ませてくれたっけ。
冷たい濡れタオルと、程好い苦味と酸味の温かいコーヒー。
柔らかいタオルケットをかけられて、クッションを枕に3時間は爆睡。

「オレって幸せだったんだな〜」

佐久間が相当甘やかしてくれてた事に今更感謝を覚えた。
マジ申し訳無い。
オレは相当お前に甘えていた。
迷惑かけまくってた。
1人暮らし自体はそんなに苦じゃないが、こういう時は辛い。
アイツの厚意は有り難過ぎた。

「さくまぁ〜…」

徹夜明けってのは精神的にも弱ってるのか、無性に人肌が恋しくなる。
会いたい、触れたい、触れられたい。
あの温かいコーヒーが飲みたい。
たまに作ってくれたお菓子が食いたい。

「あのまま佐久間んトコにいればよかった…」

まぁ無理な話なんだが。
オレはアイツの保護者でも保護される側でもないし、ましてや恋人でもない。
佐久間の事はずっと好きだったが、オレの報われない片想いだ。
アイツにはすでに恋人がいる。
にも関わらずオレを居候させてくれてたんだ。
これ以上は流石に望めない。
それにオレがいたら、大事な恋人との時間も碌に過ごせないだろう。
…オレもこういう面では成長したな。
ちょっと前までは如何にソイツの邪魔をするかしか考えてなかったのに。
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