F×S

□チームメイト
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FFIの後、佐久間からの誘いで帝国に編入した。
その事に抵抗が無かったと言えば嘘になる。
確かに佐久間とは和解出来たが、源田とは真・帝国からまともに会ってない。
それに2人にあれだけの事をしたから、他の奴らだってオレを敵と思っているはずだ。
オレが受け入れられるはずが無い。
だが佐久間は大丈夫の一点張り。
結局オレが負けて、帝国に編入する事に。
急な編入という事もあって、オレは元々鬼道がいたクラスに入れられた。
佐久間とは別のクラスだ。
その教室にはサッカー部の奴らはいなかったが、全員オレを睨み殺すような目をしていた。
それが佐久間達の事があったからなのか、"編入"という異端者だからなのかわからない。
だがこれからの日々が楽しいものじゃない事だけはわかった。
せめて佐久間がいれば、もう少しマシだったのか?


――――――――――――――
――――――


部活に行けば、更に憎しみの籠もった視線の数々がオレを突き刺す。

痛いやめろ見るなやめろ痛い怖い痛い見るな怖い来るなやめろ痛い痛い痛い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

「不動、どうした?」
「ッ!」

声の方を見れば、全く敵意の無い瞳があった。
キョトンとした顔、"仲間"に向けられる目、憎しみの無い態度。
オレが安堵するには十分なものが全て揃っていた。

「佐久間…」
「大丈夫か?」
「あぁ…」
「佐久間」

突然源田が佐久間を呼ぶ。
わざわざ自分の所まで行かせ、何か話している。
内容は大体想像がつく。
大方オレと関わるな、的な事を言っているんだろ。

「ごめん不動、行こう」

なぜか佐久間はオレの元に戻り、オレの手を引いてグラウンドと向かった。
ほっとけばいいのに。
そうすれば、昔からのお仲間と仲よく出来るのに。
オレとより、アイツらといる方が佐久間も楽しいだろ?
同じ思い出をたくさん持ってる奴らとの方がいいだろ?
何でオレといるんだ?
1人でいるオレの味方して、イイコのフリしてるのか?
オレはコイツに利用されてるだけなのか?

「なぁ佐久間…」
「ごめんな、不動。
 辛い思いさせて。
 そんなつもりじゃなかったんだ。
 きっと皆、FFIでのお前を見て、お前の事をちゃんとわかってくれると…。
 ごめん…ごめんなさい…不動…」

どんどん早くなる佐久間の歩調と聞き取れなくなる声に、泣いているのだとわかった。
佐久間を疑っても何にもならないとわかっていたのに、オレは…。
一度"仲間"との日々を味わうと、それが無くなった時や振り出しに戻った時がこんなに辛いのか。
「痛い」とか「悔しい」以外で人は泣けるのか。
他人のためにも、人は泣いてあげられるのか。
泣き方を忘れたオレに、泣き方を思い出させてくれるのか。

「ごめん…不動…。
 オレが、お前を誘わなかったら…」
「く…うっ…」
「ヒック…ごめんなさい…。
 ごめんなさい…」

謝るのはオレだ。
一瞬でもお前を疑ったオレの方だ。
でも、一度泣き出したら、止め方がわからない。
最後に泣いたのは、思い出せないくらい前だから。
だから止め方を思い出せるまで、もう少しこのまま…。
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