ANOTHER×S

□一方通行
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「先輩、オレにもそれくださいよぉ」

また来た、欲張り。
いつもそうだ。
コイツはオレが持ってるものは何でも欲しがるんだ。

「いーやーだー」
「いいじゃないですか〜」
「何でやらなきゃいけないんだよ」
「オレが欲しいから」

コイツは何でも欲しがる。
オレが持っていたボールも、食べていた飴も、それこそ何でも。

「欲しいんですぅ」
「はぁ…ほらよ」
「やったぁー!」

せっかく買ったアイスも半分盗られた。
オレが食べたくて買ったのに。
いつもそうだ。
オレのものを全て欲しがって、しかもしっかり盗っていくんだ。

「ありがとうございます、先輩!」

あぁもう、最悪。


――――――――――――――
――――――


久々に1人の帰り道。
源田は生徒会、不動は野暮用(どうせまた女だろう)。
1人で帰るのは嫌いじゃない。
けど好きでは、ない。

「…佐久間せんぱ〜い!!」
「ぐぼっ!」

突然、背後からのタックル(もどき)。
危うくそのまま地面に倒れ込む所だった。

「…成神ぃ〜」
「へへ〜、一緒に帰りましょう!」
「…」

オレのだんまりを肯定と受け取ったのか、成神はオレの隣を並んで歩く。
チラリとその顔を盗み見ると、欲しいものを全て手に入れたような、幸せそうな満面の笑みだ。
思わず溜息が出た。

「お、次郎ちゃん」
「不動!」

偶然ばったり不動に出くわした。
呑気にチョコクレープなんか食ってやがる。

「美味そう、一口寄越せ」
「はぁ?」
「いいじゃねぇか」
「や」
「今度アイス奢ってやるから」

アイスの単語に釣られた不動からクレープをもらう。
冷たいバニラアイスと生クリームの甘さの中にあるビターテイストのチョコレートソースがこれまた美味い。

「はぅ〜、美味い〜」
「お前本当に幸せそうに食うよな」

さっきから成神がオレの制服の裾を掴んでいるが、今のオレにはクレープのが優先事項だ。
不動にもう一口、と強請る。
何だかんだで不動もくれたりするからオレの機嫌は最高にいい。

「…先輩、行きましょう」
「わっ、ちょ、成神!」

いきなり成神がオレを引っ張ってどんどん前に進み出した。
今までオレのペースに合わせて歩いていたはずの成神の歩調が速い。
何度も足が絡まり転びそうになる。
後ろの不動の驚いた顔がみるみる小さくなっていく。
呆けてないで助けろ馬鹿不動!
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