SkyFeather&Future

□No.7 安らぎ
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「よっ、と。左腕怪我してたんだ、ごめんね」
「いえ、大丈夫です」

外に出た時に俺の左腕を見て気がついたようだ。
店の中でブレザーを着ていたので気が付かなかったのも無理はない。
さっきまで痛くはなかったが今は傷口がピリピリとする。
真っ直ぐ立とうとした途端に激しい衝撃が走り、体制が崩れる。

「わぉっ!? 大丈夫かい!?」
「すんません、腕がちょっと」
「無理しないでくれ、えっと、家はどこだい?」
「あそこです」
「あの道かー、了解」
フラボノさんは俺を背負っているのにも関わらず軽い足取りで人気のない道を歩いていく。
しまいには軽くスキップまでしている。
その振動で傷が痛い……。

「あの……、普通に歩いてくれません? 傷口が痛いです……」
「あ、ごめんね」

悪びれた様子もなく返事をするがしっかりと速度を落としてくれたのでわかってはくれたと思う。
そして俺は納得する。
兄があのような性質なのだからフランがあのようなのも本当に納得がいく。
くだらないことを考えているうちに俺の自宅が見えてきた。

「あ、俺の家ここです。ありがとうございました」
「部屋まで送るよ」
「へっ?」

何の冗談だ。
いくら何でも部屋まではないだろう。
単にお人好しなのかバカなのか……。
どんなに反抗しても動けないことには変わりないのでおとなしい家に入れるしか選択肢はない。

「はい」
「ん?」
「俺の家の鍵です」
「あいよ、今開けるね」

カチャン、と音が鳴るとすぐに玄関のドアが開く。
その後は降ろしてもらって家にあがったがどうもクラクラしてうまく歩けない。
結局、最後まで世話になりっぱなしだ。

「よっ、と」
「何か本当にすみません」
「いいの、いいの」

ニコニコと笑うフラボノさんを見て俺は少し申し訳なく思えてきた。
俺の部屋にはめぼしいものはない。
しかしお礼はしたい……。
俺は目だけで部屋を見渡してとりあえず、

「あ、何にもないんですけどゆっくりしていって下さい。本とか好きに読んでいいんで」

と言った矢先だった。

「ぷくっ、ははははは……!」
「え……」
「あ、ごめん。この漫画借りていい?」
「い、いいですけど」
「じゃあ1週間くらい借りるわ! これ、気になってたけど買うまでに踏み切れなくてねー」

何て人だ。
勝手に他人の漫画を読むとは……。
ありえない。
と言うかそんな人に遭遇したことがない。
まぁ、喜んでくれたからいいか。
そう思いながら俺は知らず知らずに眠りに落ちた。

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