SkyFeather&Future

□No.9 悪く思わないで
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退屈な時間だけが過ぎる。
白い天井もいい加減見飽きた頃だ。
腕の包帯も、味気ない服も。
外の世界が懐かしく感じてくるころだ。
唯一の楽しみは……。

「やっ」
「十也ちゃんっ! 元気〜?」
「ノート取ってきたわよ」

みんなが来ることだ。
変わらない笑顔で見舞いに来てくれるのだ。
俺も思わず頬が緩んでしまう。

「待ってたぜ、退屈して干からびるとこだったぜ〜」
「ははっ、そりゃあ言い過ぎだ」
「あんたはミイラか」

会ったついでに冗談を言ってみる。
今の俺の唯一の楽しみだ。

「で、最近どうだ?」

最近の街について聞いてみる。
俺が欠員していることもあっていったん事件が起きると苦しいものがある。
早く復帰したいところだが体はそうはしてくれない。
腕を回す度に自分の体が鈍っていないか気になるくらいだ。

「とりあえずこれと言った大きな事件はないわね、あっても泥棒とかぐらいよ」
「そっか」
「十也が復帰するまで大きな事件が起こったりしなければいいけど……」

不安そうに表情を曇らせる雪那。
事件はいつ起きるかわからないのだから不安そうにするのも無理はない。
俺でもニュース番組を見ても把握できないことはある。
どうしてもそれを防ぐにはこの目で確かめる必要があるのだから。

「ああ、早く復帰しねぇとなぁ」

俺は肩を後ろに伸ばす。

「そうだねっ!」
「でも無理しないことだね」
「また怪我なんかしたら許さないわよ」
「わーってるって」

騒がしく笑っていると、絶妙なタイミングで看護師が俺の病室にやってくる。
それに気が付いたみんなは帰宅する準備に入る。

「んじゃ、また明日来るから」
「またねっ!」
「元気にな〜」
「おう!」

俺は手を振って帰るみんなを見送った。

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