Long

□童話のような世界 1
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食堂が開店してからまもなく、常連客のひとりの柳蓮ニが来店した。


「いらっしゃい、蓮ニ。今日も早いな。」

「ああ、家が近いからな。それに、朝から自分で料理するのは面倒だ。」

「柳さんって、見た目によらずあれっすよね。無精者って感じ。」

「ほ〜う、無精者なんて言葉よく知っていたな。まあ、理由はもうひとりあるんだがな。」

「もうひとりの理由?なんだそれは?」

「お前に会うためだよ。弦一郎。」

「俺に?朝っぱらから俺に会って何が楽しいのだ?」

「理由はない。だが、あえて言うならば俺がお前のことが好「お待ちどうさま!!モーニングセットです!!」

「…赤也」

「はい?(抜けがけは許さないっす!)」

「…これはなんだ?(ふん、何のことだ?)」

「ホットサンドとサラダとコーヒーです。(とぼけないで下さい!さっき兄貴に告白しようとしてたでしょう。兄貴は俺のっすから)」

柳の目の前には、真っ黒に焦げたサンドイッチと有り得ない色をしたドレッシングがかかったサラダにコーヒーと呼んでいいのか悩む液体が置いてあった。

「…いただきます。(ふっ、甘いな!こんなことで俺の妨害をしようとなど。この程度の料理味音痴の俺にはさほど苦痛ではない。)」

「くそ!(でも、味音痴ってどうなんだ…)」

「それと、何を勘違いしているのか知らんが、弦一郎は俺のだ。」

「なっ、違いますよ!俺のです。」



そんな、かなり無益な言い争いをしている二人を見て、他の客の接客をしていた弦一郎が「二人共仲が良いな。」などと、考えていたことは誰も知らない……


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