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□溺れる金魚
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校門を過ぎたころに俺は、さも今思い出したかのように弦一郎に問いかけた。
「弦一郎、今日これから暇か?」
「ああ、暇でなければお前を家に誘ったりせん。」
拗ねたような物言いが可愛くて思わず笑みがこぼれる。
「何を笑っているのだ!?」
「いや、ついな…。それよりも暇なら家に来ないか?」
「…さっき用事があると言っていなかったか?」
「ああ、言ったぞ。」
「嘘をついたのか!!たるんどるぞ蓮ニ!」
そう言い、弦一郎は怒って一人で帰ろうとするので、俺は慌てて追いかけた。
「待て弦一郎。俺は嘘などついてない。」
「では、用事があると言ったのは何だったのだ!」
「だから、ちゃんと用事はあっただろう?」
「どういうことだ?」
「俺の用事は、大切な人を家に誘うというものだ。それで?お前はこの誘いを受けてくれるか?」
そう耳元で囁くと、弦一郎は顔を赤く染めながら「馬鹿者」と呟き小さくうなずいた。

そんなお前に見とれる俺は、



 溺れる金魚


(俺がお前に溺れていく確率はきっと…)
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