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ふと柳が赤也の方を向いた。
(赤也、明日は邪魔をするなよ。)
(絶対嫌です。て言うかもう来ないでください。)
(・・・ふっ、男の嫉妬は醜いぞ。大体俺は、大事な客だろう。客が少なくなったら弦一
郎も困るだろう。それでも良いのか?)
(別に、あんた一人来なくなっても困りません!!)
(赤也・・・。あまり俺を怒らせない方がいいぞ。脅すわけではないが、この前ちょっと
した仕事で俺の怒りに触れた奴がいたが、ここ三週間姿を見た奴がいないそうだ。)
(それすっげー脅してるじゃないすか。というより、ちょっとした仕事って何すか。あ
んた一体どんな仕事してるんですか!?)
(企業機密だ。)
(秘密じゃなくて、機密なのがさらに怪しいんすけど・・・)
しばらくにらみ合っていたが、柳はさっさと弦一郎の方に視線を移し、
「弦一郎、明日の朝食はお前が作ったものが食べられることを期待している。急がない
と仕事に間に合わないので、もう行くがまた明日会おう。」
と言いもう一度半目で赤也を睨みつけてから出て行った。
「ふむ、明日のモーニングセットは蓮二の好きな物にするか。・・・それにしても、蓮
二は何の仕事をしているんだろうな。」
他の客たちも朝食を食べ終え、帰っていた後弦一郎は皿を洗いながら呟いた。すると、
側で食器を拭いていた赤也が、さっきのことを思い出して怒ったように言った。
「どーせろくな仕事じゃないっすよ。仕事の内容聞いても、はぐらかすとか絶対なんか
危ない仕事してるに決まってる。弦兄、やばい仕事してる奴は店に入れない方が良いと思うんだけど〜。」
そう勝手に想像し、朝の出来事の仕返しに弦一郎にこっそり告げ口をする。
「何を言ってる?蓮二があぶない仕事などするわけないだろう。それより赤也、お前は
もっと料理が出来るようになったほうがい
い。今は客も少ないし俺が教えてやろう。少なくとも、コーヒーぐらい淹れられるようになれ。」
「えっと・・・分かりました。」
「どうした?」
「何でもないッスよ!(今朝のは、ただ柳さんに意地悪したかっただけで別にコーヒー
ぐらいは淹れれるんだけどなぁ。)」