未来の魔忍

□第四話
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見るからにボロボロな人が立ち上がり、試合を申し出た。
ちょっと体を動かしただけでも痛いのか、その場で蹲っている。それを心配した浦飯さんが駆け寄っている。
あんな体で吏将さんと戦うの?


「吏将さん、あの人と戦うの?」
「戦う?ふん、あんなくたばり損ない、俺が引導を渡してやるまでよ」
「ダメだよ、死んじゃう」
「・・・氷織」


石盤に寄りかかった私に吏将さんが近づいてきて、頭を掴まれる。
吏将さんは握り潰すように力を込めてるのか、頭が痛い。


「じゃあ何か?俺等が負けてもいいのか?」
「だ、だって・・・」
「いいか?俺等が負けたら希望が無くなるんだ。即ち、凍矢の願いも叶わない」
「・・・・・」


吏将さんの言うとおりで、私は黙ってしまった。
あんなボロボロな人と吏将さんを戦わせたくない。でも、吏将さんが勝たないと私達の、凍矢の願いが叶わない。
でも、こんな事してまで私達は手に入れたいのかな・・・?


「オイ、何ゴチャゴチャしてるんだ。早くかかって来やがれぃ」


相手が挑発するような台詞が聞こえ、吏将さんは無言で行ってしまった。



それからはもう、吏将さんは相手に容赦しなかった。
桑原さんは必死に技を出そうとしているんだけど、よっぽど重症だからか、出ないらしい。
そんな人に吏将さんが殴ったり蹴ったり、もうやられっ放し。
本当は吏将さんを応援しなきゃいけないんだろうけど・・・、出来ない。
私は光なんていらないからもうやめて、って言ったら凍矢、困った顔するかな?
・・・そうだよ、私は表の世界なんていらない。凍矢が傍にいてくれたら元の生活に戻ってもいいのに。
でも凍矢は私の為じゃなくて、自分がそうしたいんだよね、きっと・・・。





忍の世界は嫌だった。
暗いところで活動して、暮らすところだって暗いところ。
大体の忍は皆して表情も無いし、感情も無い(陣以外)
言われた事を何も感じず、淡々とこなす。ひたすら淡々、淡々と。
自分の命がかかるであろう戦いの前には絶対に一番弟子に教えていって部隊を維持する。
呪氷使いなんてそう生まれるもんじゃないから、女の私をこの世界に入れたのは苦渋の決断じゃなかったのかな・・・多分。
でも、嫌なものは嫌で、何回凍矢にそれを言って困らせたか。
凍矢に甘えて後ろに隠れる度、色んな事言われて悲しかった。凍矢も私の所為で指差されて。
そんな私でも凍矢や(凍矢の)お師匠、陣、画魔などからは優しくしてくれて。
嫌だったけど、この世界にいなきゃ凍矢達には会えなかった。
・・・でも、女の子として過ごさなくてもいいって言ったら嘘になっちゃう。
出来る事なら、戦いなんて縁のない人間の女の子として生まれたかったな・・・。






 
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