未来の魔忍

□第七話
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「・・・なんだ、その格好」
「話せば長くな・・・らないか。んっとね、お酒をぶち撒かれた」
「は?」


いつもと違う格好で現れた氷織に凍矢がそのまま質問してみたところ、またもや疑問が生まれる回答が返ってきた。
ちなみそんな氷織の格好はと言うと、白のふんわりとしたブラウスに薄茶のプリーツが入ったスカート。人間の女が着る様な格好である。


「出会い頭にね、人間の女の人とぶつかって、その人が持っていたお酒がまぁ見事に私の頭からぶっかかった訳・・・あ、その目やめて」


向こうから人が来るなぞ、気配で察せるようなものを・・・とでも言いそうな感じの呆れの目を氷織に向ける凍矢。
その視線の意味をわかって、氷織は泣きそうな気持ちになった。
でね、その後・・・と、氷織は話を続ける。











「あらやだ〜!ゴメンなさいねぇ、いきなり現れるから」


謝罪している割りには、まるでこちらが悪いようではないか、と氷織は思った。
ただ、今はそんな事よりも鼻に付く日本酒独特の匂いが気になって仕方無い。
こちらもさっさと謝ってさっさと退散してさっさとシャワー浴びて着替えよう、と思って口を開く。


「いえ、こちらこそゴメンなさ」
「温子さん、どうしたんですかー?」


折角の謝罪が第三者によって遮られてしまった。
相手の女性の後ろから、別の女性が尋ねながらこちらに向かって来ている。
近寄って来た女性は、氷織の出で立ちを見て驚愕したような声を上げる。


「ちょ、どうしたんですか、その子!」
「ん〜?ちょっとそこの角でぶつかっちゃってね〜。持ってたお酒がかかっちゃった☆」
「いや、お酒がかかっちゃった☆じゃありませんよ!びしょ濡れじゃないですか!」


ぶつかってきた女性、温子より幼く見える女が頭から酒を被り、ぐっしょり濡れた氷織を心配する。


「兎に角、貴女はシャワー浴びないと!」
「あ、いえ、お構いなく」
「何言ってるの!私の部屋が近いから行きましょう!温子さんは先に行ってて下さい」
「わかった〜」


じゃぁね〜、と手を振りながら去っていく女性を余所に、氷織の手を引いて自分の部屋へと向かう。
氷織は未だショックが抜けてなかったのか、更なる事態に多少混乱していた。
そのまま成す術なく見ず知らずの少女に付いて行く形となってしまったのだった。







 
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