未来の魔忍

□第十話
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大会もいよいよ大詰め、決勝戦第四試合、幽助さんの試合。どっちが勝っても大会は終わる。
終わったら私達どうなるのかな?
脱走してまでこの大会に出たんだ。今更また忍に戻るなんて事、出来ない。
・・・今はそんな事、考えないでいとこう。

実況を挟む余裕すら見せない攻防。
前に見た時より遥かに威力が増してる霊丸。
それを受けてもかすり傷一つない、戸愚呂の身体。
あまりのレベルの違う戦いに冷や汗を垂れ流すしかなかった。
もし、仮に私達が決勝まで来て、戸愚呂と戦う事になってたら、勝てるどころか生き残れたのかもわからない。
それが正直な感想だった。






「100%・・・!」


明らかに今までの戸愚呂と違う!
何、何なの・・・アレ。


「あ・・・れ、が本当に元人間だったの!?」
「俺も俄か信じられん」
「なんだべ、この妖気・・・!」


戸愚呂が100%の姿になっただけで、私達がいたところの足場は崩れ落ち、観客も四分の一ほど減ってしまったらしい。
あまりにも衝撃が大き過ぎて、目の前の光景が現実なのかも区別付かなかった。
幽助さんがさっきと同じ威力の霊丸を撃っても、かわす訳でもなく、受ける訳でもなく、気合だけで消滅させてしまった。
100%になっただけで、こんなに力の差って出るものなの!?

戸愚呂の妖気で死んだ人達が戸愚呂に吸い込まれて行ってる。
何が起こって・・・、


「言い忘れてたが、100%の俺は酷く腹が減る。弱い者からどんどん喰う。気を吸い取りながらな。この会場の餌を食い尽くすのに20分とかかるまい」


死体のみならず、生きている、弱い妖怪も戸愚呂に食べられてしまう。
・・・あれ、何、コレ・・・、


「寒、い・・・」
「氷織!?」


どんなに寒いところにいても平気な私が、体の震えが治まらないぐらいの寒気を感じる。
気を緩んだら魂を持っていかれそうな感覚。
このままじゃ、私も戸愚呂の言う餌になっちゃうのかな・・・?
気を失いそうになるけど、失ってしまったら最期。
凍矢に支えられながら、妖気を高めるように気合を入れる。
それでも気休め程度にしかならなくて、体は相変わらずガチガチと震えっ放しだった。



和真さんが戸愚呂に殺された。
気を失いそうになっても、しっかりと幽助さんと戸愚呂の戦いを見ていた私は、和真さんが殺される瞬間まで見てしまった。
その後、幽助さんの霊気が変わった。


「えれー悲しい風だ・・・。体ン中だけ空っぽになったみてーに悲しい」
「自分と戦ってるんだ、自分自身が許せずに。いくら霊力が強くなっても、あの状態で戸愚呂と戦えるのか!?」
「でも・・・さ、私大分楽になったよ。なんか、護られてるみたい」


震えが治まった。でも、不安はある。
凍矢が言ったように、あの状態で幽助さんは戦う事が出来るの?




「俺は捨てねー!しがみ付いてでも護る!!」


倒す。そう言った幽助さんは素手で戸愚呂を殴り飛ばした後、霊丸を撃ち放った。
だけど、その霊丸は戸愚呂にあたることなく会場を突き破り、空の彼方へと飛んでいってしまった。


「次が最後の一発だ。俺の全ての力をこの一発に込める。あんたの全てを壊して、俺が勝つ」


最後・・・。
更に体を変化させた戸愚呂に幽助さん全ての力が込められた霊丸。
今までみたいにすぐ撃つ訳でもなく、本当にありったけの力や想いを込められてるかのように大きくなっていく。
そして遂に・・・!


「くらいやがれ!!」


霊丸は放たれた。
最初は片手で防御してた戸愚呂だったけど、初めて両手で防御をした。
それだけこの霊丸は今まで以上の力が込められている。
だから・・・、もし戸愚呂がコレで倒れなかったら・・・、幽助さんには反撃する力が残っていない。




「決まれー!!」




陣が叫んだと同時に戸愚呂の腕の中にあった霊丸は潰されてしまった。
周りの人達はもう終わりだと言わんばかりに力なく崩れ落ちていく。
その直後、戸愚呂の体に亀裂が走り、大きな音を立てて破裂した。
そして、そのまま倒れていった。


「相打ち・・・?」


かと思いきや、いつの間にか幽助さんが立ち上がっていて、小兎さんと樹里さんが幽助さんの勝利を宣言した。
これで暗黒武術大会は幽助さんの勝利によって幕が下ろされた。















ヒロイン視点なんだけど、全然子供らしさがない。
(2013.11.5)



 
 

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