メーラブルー
□8.
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音が異常をひっきりなしに訴えている。
誰もが忘れた病室で、一人、心の中だけでのたうちまわっている。
止めないと。今すぐにでも追いかけないと。
だけど身体は動かない。
二年間、怠惰に横たわっているだけだった身体は指先どころか、髪の先まで石になってしまっているようだった。
動かない。動けない。分かっているけれど、オレはアイツを止めないといけない。
きっとそれができるのはオレだけで、だからオレは、たとえ数秒後に死が待っていても、アイツに、やめろ。と言う為に起きなければならなかった。
ああ、なのに、ダメなのか。
こんな状態になってしまったことが、こんなにも苦しくて悔しい。
今まで苦しいことはたくさんあった。友人の悲しい声は胸を締め付けたし、アイツの不安定な心の揺らぎを感じとる度にオレまで焦燥に駆られた。
応えてやれないことが、ここまでつらいとは思わなかった。
オレの沈黙がこんなことを招くとは――無責任だと今だから自覚するけれど――思っていなかった。
喉が千切れても一言、応えてやればよかったんだ。
そうすれば、骸だってきっと――――、
ちがう。馬鹿だ、オレ。
骸は変わらない。アイツは、オレの言葉だけで何かを変えられる人間じゃない。
そう、なら尚更、動かないと。
力ずくででも、アイツを止めないと……いけない、のに。
音は不安定に響いている。
だけど聞く人は、もう届かないところに行ってしまった。