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□Il diavolo non e` cosi` brutto come lo si dipinge.
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 美しい女性だった。
 赤の混じった金色の長い髪。少女のような女性が着るに相応しい薄桃色のドレス。爪の先まで気を配った所作。あどけなさを装う微笑み、面立ち。
 名前はなんだったか、思い出せない。けれど女性はまるで昔なじみの親しい知り合いのように、控えめな気さくさで綱吉に声をかけた。
 腹の下を隠しつつ畏まった態度しかしない知り合いだらけの中、いい加減ささくれ立った綱吉の気分を察知したような、絶妙な距離を感じる微笑みと口調。綱吉はもう一度頭の中を回転させる。誰だったか、誰かに似ているようで、誰にも似ていないような。そもそも人違いではないのか。
 握手を求められて、綱吉はさしたる感慨もなく手を差し出した。酒が回っていたからだ。こんな綺麗な女性に握手を求められるなんて、とそんな浮ついた気持ちもほんの少しあったかもしれない。だけど、応じた理由の大半は――――油断だった。
 女の微笑みの隙間から、獣の牙が覗く。
 差し出された手。繊細な指、そこに繋がっている手の平に収まった小型の銃。
 銃口は、間違いなくこちらを向いていた。


  
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