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□第五章
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「小田原?」

「そ。北条とは同盟を組む心算だったから前回は引いたでしょ?」

佐助の言葉に私はうなずく。確かにお館様は前回は敵軍大将と和解して帰ってきた。それが何故今になって?

「不穏な動きがあるんだよねー。だからもう同盟はあきらめるしかないってわけ。」

私の心の中の疑問に答えるように佐助が言う。私はまた頷いた。織田のこともあるのだから、今北条に歯向かわれるのも困るのだろう。そうなる前に早めにつぶすということか。

「日は?」

「明日。前回の戦で真正面からやりあったらこっちが有利というのはわかってるからね。たぶん北条は別働隊で撹乱してくる。凛ちゃんと旦那にはそっちの相手を頼みたいんだけど、何かある?」

ということはまた私が指揮を執らなければならないということか。信頼されていることを感じうれしくは思うものの、やはり私のような人も殺せぬ小娘が…とも思う。それに、兵の命が私の采配にかかっているのだから、責任の重さを耐えがたく思うこともある。それでも私は佐助の問いに首を横に振る。信頼されている以上、それに応えることが武士の面目なのだ。

「で、凛ちゃんはいつもどおり挟撃に持ち込むんだよね。」

「それで問題がないようならそうする。」

私は正面からやりあうこともできなくはないが力ではどうしても劣るため、たいてい敵軍の陣をすり抜け挟撃の形に持ち込むことが多い。私にとってはこのやり方が一番合うのだが、本来は敵陣を真っ二つに裂き、そこをすり抜けるのは難しいらしい。

「じゃ、伏兵とかいたら教えに行くから。」

そう言って佐助は去っていった。私の戦術は伏兵に弱い。敵陣を抜け反転して敵軍の攻撃に移る際、その両脇に伏兵を潜められ両脇から攻撃される可能性があるのだ。もっともどのような戦法に対しても伏兵は有効なのだろう。ただ私の場合とる戦術が偏っているため伏兵の餌食になりやすいのだ。

「お館様のおかげで茶や花や女性の嗜みは一通り覚えたし、もっと兵法を学ぶか。一応書物は読んではいるが実践でとなると…。」

やはり誰かに教えを請うべきだろうか。でも、私を自分の娘とまで思ってくれているお館様には聞けないし、幸村は…うん、あの……うん。佐助は忍だしなー。あれ?聞ける人がいない?
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