それからU

□サッチの苦難(後)
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深夜の食堂、書類仕事に疲れた目頭を押えつつ扉を潜ったマルコは、食堂の奥のキッチンから光が漏れているのに気づく。

そこへと歩み寄り、中で動く気配を察知したマルコはカウンターに座り、その人影へと声をかける。


「コーヒー、くれよい。」

「うわっ!!・・・マ、マルコさん、びっくりしました。」

にへらと笑い、すぐさまコーヒーを用意する愛しい彼女に、仕事での疲れも忘れて頬を緩ませるマルコ。


「そういえばサッチが悪魔の実を手に入れたらしいよい。」

コトリと置かれた自分専用のマグカップを覗き込み、その琥珀色の液体がゆらりと揺れるのを見つめたマルコがカウンターを挟んで立つ名無しさんに呟く。


「はい、エースが教えてくれました。サッチさんが明日一度、私に見て欲しいって。」

「系統だけは分かるからねい・・・おめェ、サッチが食うと思うかよい?」

口につけたマグカップの隙間から、ニヤリと笑んだ口端を見せつけながら出したマルコの言葉に、その大きな瞳をくるりと天井へと向け逡巡した彼女。

「食べないんですか?・・・サッチさん。」

「さぁねい、あいつ今頃悩んでんじゃねェか?」

「マルコさんは・・・マルコさんはどうして食べたんですか?」


遠慮がちに出された名無しさんの言葉に、クツリと苦しげに笑んだマルコは、その細い瞳を遠くに移した。


「オレは・・・「ぎゃーーーーーー!!!」・・っ?!」

「え?何?」

「サッチの声だよい!いくぞ!」


すぐさま立ち上がり、声の元へと駆け出すマルコに慌てて後を追う名無しさん。

すでに姿の見えないマルコを追い、いくつかの角を曲がり、目的地であるサッチの部屋の前へとたどり着けば、大声に起こされたクルーたちの壁が出来ていた。


「なんだって?!悪魔の実が盗まれた?」

「マジかよ!誰だよ、盗んだの。」

口々に出される言葉をかいくぐり、部屋の中へと進んでみればすでにそこにはマルコの姿。腰に手を当てて、呆れたように見下ろす先には涙にくれて床に突伏するサッチ。

「大げさな声出してんじゃねェよい!何かと思うだろい。」

「だっで、バルゴ〜!」

「だぁっ!鼻水つけんじゃねェよい!」


鼻水を流して足に縋りつくサッチを蹴り飛ばし、マルコが部屋を見回す。

「他に荒らされた形跡もねェな、寝てる間に消えたのかよい。」

「サッチさん、無意識に食べちゃったとかじゃないですか?」

「名無しさんちゃ〜ん、慰めて〜・・・ぐあっ!」


気遣わしげに掛けられた名無しさんの声に向き直り、すぐさま標的を変えたサッチに再びマルコの長い足がめり込む。

「ありゃ、無意識に食えたとしても意識戻るくらい強烈な味だからよい。」

「そりゃ、ねェな。」とマルコが未だ名無しさんにしがみ付こうと試みるサッチをゲシゲシと踏み潰した時、



「うわぁ〜!!」


同じ廊下のすぐ近く、閉じられた部屋からの悲鳴が聞こえる。

ザワザワと騒がしく動く人波を掻き分け、サッチの部屋の外へと顔を出したマルコと名無しさんの目に、バタンと勢いよく扉を開けて飛び出して来たクルー。

鼻を押えて転がり出てきた異様な姿に何事かと近づき、その部屋の戸を開けたマルコは、その異臭に気づき顔を歪めた。


部屋の中央の小さなテーブルには、ご丁寧に半分に割られた黄土色の刺々しい果物。

悪魔の実と思わしきそれから漂う強烈な異臭に、扉の外のクルーたちからも嗚咽混じりの悲鳴が漏れる。

マルコの脇から顔をだした名無しさんが、小さな手で鼻を覆いながらもその光景に目を見開いた。




「あぁ、あれはドリアンですね。ただの果物ですよ。」





(5万ベリー?高すぎです。)

(くそっ!騙された〜)
                              

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