突発的
□落ちこぼれ科学者
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わたしは、十数年前に藍堂の名を捨てた。
上手くいかない生活に嫌気がさして逃げた。昔、抱いていた“ヴァンパイア騎士の世界”とは違ったから。
――虚実が現実になったとき、虚実ではなくなる。
しかし、嫌な思い出ばかりではない。もちろん、良い思い出も確かにあった。
と、まぁ……昔話をしたところでそろそろ本題にはいるか。おそらく、今日一翁が黒主学園に来るんだっけか。
また、わたし事だがいいだろうか。わたしは、藍堂家を出てから持ち前の力で科学者になり、人知れず成功をおさめた。
研究して、人間や吸血鬼の役に立ち満足していた。が、心残りがあった。
姉として、英を助ける。
それは、昔わたしが“ヴァンパイア騎士の世界”ではない世界で思っていたこと。
――藍堂英が好き。
この世界に来てから想いは消えた。だって、英と私は姉弟だから。姉弟婚は有りかもしれないが、父上は許してくれないだろう。
わたしは、藍堂の落ちこぼれ。だから、次第に想いが薄れ、期待される妹たちに苛立ちを感じた。
それから、英が生まれたと風の噂で聞き心配になった。なんか、なんというか……助けたい、ただそれだけ。