突発的

□月下に桃の花
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【神雷島の支配】





私が、神雷島(かんらいじま)に流れ着いた時、すでにこの島は雷峰(らいほう)様という巫女に支配されていた。



50年前、妖怪に襲われ海に身を投げたというのに、神雷島の妖怪や人間、半妖達が助けてくれた。



私は、この人達に恩を返さなければいけない。




神雷島、浜辺――



ザプン、と波が荒れている。


「桃夜っ、お前だけは呪印がないのじゃ!今すぐ、ここから……神雷島から去れ!!」


『ばあ様、それを言うつもりで呼んだんですか』


「ばあ様は正しいよ、桃夜。貴女は元々、神雷島の外から来た半妖。元いた場所に帰りなさい」




『嫌です!1人だけ逃げるなんてできるはずなッ!――あ゛っ……い』


鈍器で殴られると砂浜にドサッと倒れ込む。


だが、意識はかすかにあり目を必死に閉じまいとしていた。



「桃夜、もう諦めなよ」



「僕達は、雷峰(らいほう)の奴に半分妖力を吸い取られてしまった役立たずだ。もう、闘えない」


「闘えないあたし等は、どうせ雷峰の餌になるのを待つだけ」



「お前は、運が良いな。まだ、呪印もないし妖力も吸われてない」



『っ……諦めるな!!』


あぁ、やばい。


意識が遠退く。




まぶたが重い。



あ……――




「……やっと眠ったか。後は、魚にでも運んでもらうか」




桃夜を、海の中に放り込むと何処からかわいてきた魚が連れて行く。


浜辺にいる者達は、その光景を見守るしかない。


「――ばあ様。これで、雷峰の呪印がない桃夜はもう二度と神雷島に来られないね」


「そうじゃの」




「雷峰が僕等に言った。桃夜を逃がしたければ、50年に1度結界が弱まる今日逃がせと……」



「私達の命と引き換えに」


「あの子は関係ないのだから」


「これは、神雷島に住む雷峰と私達だけの問題よ」



「神雷島に入るのは簡単。出るのも簡単。しかし、もう一度、神雷島に入る事は出来ない」



「言い伝えによると、神雷島を出るということは、神雷島を棄てるということ」



「サヨナラ」







雷峰様の城――


「雷峰様、桃夜が神雷島を出ました。島の奴等が、我々の言う事を素直に聞いたということでしょう」


「ほほほ、皆わらわの嘘にまんまと騙されおって、馬鹿な奴等だねぇ……」


「そうですね、雷峰様」


「ええ。桃夜には呪印がある。わらわが桃夜と二人きりのときつけた。……それに、呪印がある者でも神雷島は出られる。皆信じちゃってぇ……ま、どうせあの子は戻って来るわね」



舌舐めずりをする。


「絶望に満ちた時、ね」




「もうすぐですね、復活の日」






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