突発的
□月下に桃の花
2ページ/4ページ
【神雷島の支配】
私が、神雷島(かんらいじま)に流れ着いた時、すでにこの島は雷峰(らいほう)様という巫女に支配されていた。
50年前、妖怪に襲われ海に身を投げたというのに、神雷島の妖怪や人間、半妖達が助けてくれた。
私は、この人達に恩を返さなければいけない。
神雷島、浜辺――
ザプン、と波が荒れている。
「桃夜っ、お前だけは呪印がないのじゃ!今すぐ、ここから……神雷島から去れ!!」
『ばあ様、それを言うつもりで呼んだんですか』
「ばあ様は正しいよ、桃夜。貴女は元々、神雷島の外から来た半妖。元いた場所に帰りなさい」
『嫌です!1人だけ逃げるなんてできるはずなッ!――あ゛っ……い』
鈍器で殴られると砂浜にドサッと倒れ込む。
だが、意識はかすかにあり目を必死に閉じまいとしていた。
「桃夜、もう諦めなよ」
「僕達は、雷峰(らいほう)の奴に半分妖力を吸い取られてしまった役立たずだ。もう、闘えない」
「闘えないあたし等は、どうせ雷峰の餌になるのを待つだけ」
「お前は、運が良いな。まだ、呪印もないし妖力も吸われてない」
『っ……諦めるな!!』
あぁ、やばい。
意識が遠退く。
まぶたが重い。
あ……――
「……やっと眠ったか。後は、魚にでも運んでもらうか」
桃夜を、海の中に放り込むと何処からかわいてきた魚が連れて行く。
浜辺にいる者達は、その光景を見守るしかない。
「――ばあ様。これで、雷峰の呪印がない桃夜はもう二度と神雷島に来られないね」
「そうじゃの」
「雷峰が僕等に言った。桃夜を逃がしたければ、50年に1度結界が弱まる今日逃がせと……」
「私達の命と引き換えに」
「あの子は関係ないのだから」
「これは、神雷島に住む雷峰と私達だけの問題よ」
「神雷島に入るのは簡単。出るのも簡単。しかし、もう一度、神雷島に入る事は出来ない」
「言い伝えによると、神雷島を出るということは、神雷島を棄てるということ」
「サヨナラ」
雷峰様の城――
「雷峰様、桃夜が神雷島を出ました。島の奴等が、我々の言う事を素直に聞いたということでしょう」
「ほほほ、皆わらわの嘘にまんまと騙されおって、馬鹿な奴等だねぇ……」
「そうですね、雷峰様」
「ええ。桃夜には呪印がある。わらわが桃夜と二人きりのときつけた。……それに、呪印がある者でも神雷島は出られる。皆信じちゃってぇ……ま、どうせあの子は戻って来るわね」
舌舐めずりをする。
「絶望に満ちた時、ね」
「もうすぐですね、復活の日」
.