ヘタリアの世界

□乙女心
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庭には綺麗な薔薇が咲き誇る古い家。

一見、豪華な家だがそこには



ドワンッッ!!


「…な、なんで爆発しちまうんだ?」




料理がド下手な紳士が住んでいた。



俺は休日なんでその家を訪れていた。
今の音、そして臭いからして彼は今料理をしているんだろう。


あの生物兵器の味を思い出して顔が歪む。



「まったく…、俺のために作ってくれるのは嬉しいんだけどな」



チャイムを鳴らすと慌てた様子でイギリスが顔を出した。


「やあ、イギリス。今日も失敗したのかい?」


「ち、ちげーよばかぁ!」


「はいはい。とりあえず家に入らせてもらえるかい?寒くてさ」


ぶるぶると大げさに震えて見せると、イギリスは呆れたように溜め息をついた。


「お前…。んなジャケット一枚でくるからだよ。紅茶淹れてやるからな」


「コーヒーがいいんだぞっ!」


「黙って紅茶飲んどけばかっ!」



このやり取りが俺は好きだったりする。


…まぁ、イギリスには絶対言ってやんないけどね!




リビングにいくと、自然と溜め息が出た。


「イギリス…、君は何を作ったんだい?」


「ぅ……」


おずおずと差し出してきたのは料理…、いや未知の物体だった。


「…これは?」


「……カレー」


「…固体のカレーは初めてみたんだぞ!」


「つ、次こそ失敗しねーからな!!い、いつも失敗なんかしてねーけどよ…。わ、わざとだからな…」

「って君まだ作るつもりなのかい!?」



呆れを通り越して尊敬してしまう。

何をそこまでカレーにこだわっているんだ…。



呆然としている俺をよそにイギリスはいそいそと料理の準備を始めていた。


慌ててイギリスの腕をつかみ、料理を中断させる


「なにすんだよアメリカ。カレー作れねぇじゃねーか」


「つ、つくらなくていいんだぞっ!俺はコーヒ……いや、紅茶が飲みたいな!」


「紅茶?本当か? じゃ、じゃあ今すぐ淹れてやるなっ!」



パッと笑顔になったイギリスを見て安堵する。


全くこの人は…、と呆れると同時に疑問が浮上してくる。


何でこんなにも料理を作りたがるんだろう、と。



自分の料理が不味いのは他国にも俺にもさんざん言われているはずなのに…。



「ねぇイギリス」


カチャカチャと紅茶を運んできたイギリスに尋ねてみた。


「い、いや、その、な。えと…、あー…」


イギリスにしては珍しく歯切れの悪い言い方だった。

そういえば、と昔の記憶を思い出した。


小さい頃、俺がイギリスにあることを質問したときも彼はこうなっていた。


確か…、答えは俺絡みのことだったはず。
なら、これも?



この答えに至った瞬間にイギリスが答えをだした。


「お、お前に美味い料理……たべ、させてやりたくて…」



顔を真っ赤にして、もじもじと答えるイギリス。



「……」


「あ、アメリカ?なんだよ、どうした…?」



ああ、もう本当この人は!!




「イギリス…、他の国にそんなこと言っちゃ駄目だからな!」


「はぁ?な、なんでだよ!?てかお前以外に言うわけ無いだろ!!!」



言った途端に耳まで真っ赤にさせるイギリス。


つられて俺まで赤面しちゃったじゃないかイギリスの馬鹿…っ!



「じゃ、じゃあ俺料理つくる、からな!」


「あ、あぁ」




顔の火照りをどうやって冷まそうか考えていると、いつものあの音が聞こえてきた。



ドワンッッッ



「な、ななな…!?」



そして、彼の困惑する声も。




俺は苦笑してソファから立ち上がりキッチンへ向かう。







なんて迷惑で可愛い乙女心なんだろうね!
 

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