小説・蓋を開けたら2

□11
1ページ/3ページ



 あの後、無事女の子を救出することが出来たゴールドとクリスタルは、ゴールドが銀と離れた場所に向かっていた。というのも、流石に銀1人を置き去りに避難場所に行く気にはなれなかったゴールドが、1人で行くと聞かなかったため、話し合いの結果皆で行くことにしたのだ。
 その場所に向かいながら、今に至るまでの出来事を離す。そして行き着くのは、やはり自分達を助けてくれたあの人たちだ。ゴールドは銀のことを、クリスタルは緑と青のことをそれぞれ話した。
 今分かっている事は、依頼で助けに来てくれているらしい事と、それにはウツギ博士も係わっているというらしいという事、まだ仲間がいるらしいという事、そしてあの“恐怖”の正体は、魔僕、という化け物らしいという事だ。全てに“らしい”が付く不確定なことばかりだが、害意が無いのは明らかなので警戒心はあまり持てない。その事もあり、不確定な事よりもクリスタルには言いたい事があった。


「1人で勝手に出ていって…!どれだけ心配したと思ってるのよ、ゴールド!!」

「無事だったんだかいーだろ、人助けにもなったんだしよぉ」

「それは結果でしょ!?」


 下手をしたら死んでいた。あの“恐怖”を間近で受けた分、それはゴールドの方が、嫌という程分かっている。だからか、クリスタルの説教に噛みつく勢いがいつもより弱い。反省しているかどうかと聞かれれば、それは微妙なところであるが。
 こんなやり取りはいつものことで、クリスタルに手を引かれている奇跡的に大きな怪我無く助けられた女の子は、笑い声を漏らした。
 だが、この比較的穏やかな時間は、そう長く続かなかった。

 ゾクリ、と“恐怖”が、また背中を這い上る。

 “恐怖”に固まったクリスタルの手に、泣く事すら忘れた女の子がしがみ付いた。ゴールドは脳に警報が鳴るまま、クリスタルの手を引き走り出す。
 しがみ付かれ、手を引かれ、それで正気に戻ったクリスタルだが、思うように体を動かすことは出来なかった。唯一、2人の手を放さないように力を込めるのがやっとだ。
 それは女の子も同じだ。それに、背丈や年齢の問題もあり、前を走る2人に比べ女の子の足は遅い。2人とも“恐怖”による焦りでそれを考慮する余裕も無く、案の定、女の子は足が引きずられ盛大に転んでしまった。


「きゃう!」

「あっ!」


 女の子が転んだことにより、クリスタルの足も止まる。立ち上がらせるため、ゴールドと繋いでいた手を放した。
 そして聞こえた呪縛の咆哮に全員は身を竦ませる。
 咆哮と共に現れた魔僕に声無き悲鳴を上げた。
 その大口を開け迫りくる“恐怖”の権化に、クリスタルは反射的に女の子を庇い、キツク目を瞑って。
 自分の死のイメージが、脳内に描かれた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ