小説・蓋を開けたら
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「で、グリーン。大体予想は出来るんだけどさ、なんでシロガネ山に来たんだ?」
椅子に座ったまま、オレが使っているベッドに上半身を凭れさせながら聞いてくるレッドは、本当に予想が出来ているのだろう。そこまで疑問には思っていないようだった。
「おじいちゃんに、お前のところで匿ってもらえといわれた。国軍が子供を連れて行っているから、と」
レッドは「やっぱりな」と漏らした。
「オレは別に構わないぜ!此処に一人暮らしも飽きてきたし!」
笑いながら言うレッドに「じゃあ普通に街で暮らせ」と言いそうになるも、すんでのところで呑み込んだ。
こいつにはこいつなりの事情がある。実際に聞いたことは無いが、付き合いが長い上にレッドが無駄に分かりやすいため、それくらいの事は察しが付いていた。
「あ、そういえばさ、具合大丈夫か?ホントは医者に診せたほうがいいんだろうけど、ふもとには国軍がいるみたいだからさ」
連れて行けなかった、と言うレッドに、無意識のうちに顔が下がった。
「やっぱ具合悪い?」
心配そうに問いかけてくるレッドに首を振り、一拍置いて口を開いた。
「………オレは、今まで国軍が正しいと思ってきた。だが、此処に来るまでに様々な事を見て……何が正しいのか分からなくなった」
ここに来るまでの間、国軍によって連れて行かれる年下から自分より少し年上の子供を何人も見てきた。内乱によって、争いに参加していない人たちが大勢死んでいるのを見た。極めつけはオレを襲ってきたごろつき共だ。
グリーンは、ごろつき共から直接「金を貰っている」と聞いたわけではないが、奴らが軍から報酬を貰っているというのは彼の中で確定された事実となっていた。まぁ間違ってはいないのだけれど。
俯き、何もしゃべらないでいれば、自然と沈黙がその場を支配する。
その重い沈黙を破ったのはレッドだった。