小説・蓋を開けたら

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「別にさ、正しい事と悪い事の境界線引く必要はないんじゃないか?」


 その言葉に、グリーンは顔を上げた。
 レッドの表情は先ほどとは一変し、実に真剣なものに変わっていた。


「正しい事とか悪い事ってさ、そのときの状況とか立場によって1人1人変わるわけだろ?だから、無理に決めつける必要はないと思う」


 「それに」と一度区切り、レッドはグリーンと真っ直ぐ視線を合わせ、ニッと笑った。


「何が正しいのか分からなくなった、ってことは、グリーンの中では国軍は正しくないってことだろ?否定が出来るなら、自分の中で正しいと思う事があるんじゃないのか?」


 その言葉に、はっとする。


「それなら、それを信じればいいと思うけど?グリーンは考え過ぎだろ」

「…確かにな」


 そうだ。国軍の行っている事は悪だと感じた。なら自分の中で、正しい事の答えは既に出ているのだ。


「まさか、お前に教えられるとはな」

「んな!?」

「それと、オレが考え過ぎなんじゃない。お前が考えなさ過ぎなんだ」


 そう言うと「酷ぇ!!」とレッドが喚く。
 自分で作っておいてなんだが、ようやく霧散した重い空気にほっとした。


「せっかくお粥作ったのに持ってこないぞ!?」

「ちょっと待て。…作ったって、お前がか?」

「オレ以外に誰がいるんだよ」

 不機嫌そうにそう言うが、確認するなと言う方が無理な話しだ。
 確かに、レッドはこの家に1人暮らしだし、今現在、この家に他の人間がいる気配はない。それでも、レッドと料理がいまいち結びつかない。


「………ちゃんと食えるんだろうな?」

「お前オレの事なんだと思ってんだよ!?もう3年以上1人暮らししてんだぞ!料理ぐらいちゃんと出来るっ!!」


 食べて驚け!と吐き捨て、レッドは部屋を出て行った。
 足音からして、この部屋は2階にあるらしい。…1人暮らしのわりに大きくないか?この家。



 そして、戻ってきたレッドから粥を受け取り、その美味しさに目を見開くのは5分ほど後の事だ。




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