小説・蓋を開けたら

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「…分かったよ」


 結局、言い訳は考えつかなかったようだ。本当にしぶしぶといった様子でそう呟いた。


「穏健派に知り合いがいるんだ。それでいろいろ教えてもらってる」


 “穏健派”とは国家に不満はあるが、大々的に行動はせず、主に情報を駆使し王直属にのみ攻撃を仕掛ける団体だ。他にも、ただ町に住んでいる人たちを巻き込む争いを止めようとする事もあるし、町の復旧作業の手伝いもしている。
 この国はなかなかに広いため、王の統治が行き渡っていない場所もある。そこは大抵田舎の方で、グリーンの故郷、マサラもそれにあたる。そういったところに住む人たちは、内戦にはほぼ無関係でのんびり過ごしているのだが、過激派はそんなことなど気にせず、軍がいれば攻撃を仕掛ける。穏健派はそれをよしとしない。なるべく少量の血で終わらせようとするのだ。そのために様々なルートを駆使して、ありとあらゆる情報を集めている。なので、穏健派は情報に通しているのだ。


「穏健派に知り合いが?…反政府団体に入ってはいないよな?」

「入ってないって!ただ新しい情報が入ったら教えてくれる約束なんだ。オレも何か分かったら教えてるし、たまに潜入の手伝いもしてるけど」


 とんでもない、と首を振るレッドの所作は大袈裟なほどだが、反政府団体の一員と思われでもしたら厄介な事になるのは分かりきっているので、その大仰な仕草にはあえて何も言わなかった。

 反政府団体には仲間と思われても敵と思われても厄介だ。まず国側に狙われるのは言うまでもない。そして、穏健派と思われたら過激派からも狙われるのだ。過激派は自分たちの行いが一番の近道であり正義だと考えている者が多い。そのため、毎度邪魔をしてくる穏健派を目の敵にしているのだ。穏健派は別段そんな目で見ている訳ではないが、穏やかに暮らしている人たちを巻き込む彼らに良い感情は抱いていない。国軍にとってはどちらもうざったい敵に変わりはないので、見付け次第即捕まえる、もしくは殺しにかかる。そのため否定する時は皆必死になる。勘違いで捕まるなど冗談ではない。
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