小説・蓋を開けたら
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「グリーン!」
まだ日が高く気持ちのいい天気。シロガネ山の屋敷内に響く声。書庫に籠り、文書を読み漁っているグリーンの元に、どたばたという忙しない足音と共にレッドがやってきた。
「何だ」
一瞥もせず、目線を本に向けたまま返事を返す。そんな態度もいつもの事なので、レッドは気にせず話しを続ける。
「協力者から連絡が着たんだ」
その言葉を聞き、ようやくグリーンはレッドと視線を合わせた。実際、グリーンは協力者と会ったことがない。それどころか名前すら知らない。唯一分かるのは、レッドが信用しているという事だけだ。だが、それだけでも信用に値すると思ってはいる。レッドは、見かけによらず人を見る目があるのだ。
当の本人は、無言で続きを促され手に持っていた紙を見やった。
「『2日後の昼時、カントーの中央軍部に集められていた子供たちが、帝王軍部に移動されることになった。理由は定かではない』」
「帝王軍部に…」
「うん。これは前から分かってた事なんだけど、子供を集めてるのって、上からの命令らしいんだ」
読み終わった紙を、一応グリーンに渡しながら、ちょっとした情報を続けると、彼の眉間にしわが寄った。不可解だ、とでも言いたいのだろう。
「で、オレは明日、中央軍部に潜入しようと思ってるんだけど」
どうする?とまでは言わない。それほど短い付き合いではない。言わなくとも、察してくれることをよく知っている。
「帝国軍部の方がいいんじゃないのか?」
女性特有の丸みを帯びた文字で書かれた手紙をレッドに返しながら立ち上がる。
グリーンも、直接「行く」とは言わない。言わずとも、行動と言葉だけで察してくれる事を分かっているからだ。
「いや、やっぱり帝国軍部の方が防犯対策強固なんだよ」
「なるほど。それでまだ防犯の薄い中央軍部に入り込むと言うわけか」
「そ。帝国軍部から使者も来るらしいし、中央のお偉いさんなら多少は何か知ってるだろうしな」
口ぶりからして、何度も侵入した事があるのだろう。その侵入が軍にばれたのかばれていないのかは置いておいて。
「侵入などした事はないからな。やり方はお前に任せる」
「分かった」
侵入についてをレッドに一任し、打ち合わせを開始した。