小説・蓋を開けたら

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 強制的に軍を一緒に探る事を取り付けられてから初めてグリーンと探りに行くことになり、その打ち合わせの最中、オレは一冊の本をグリーンに渡した。


「これはなんだ?魔法書のようだが」

「ああ、魔法書だぜ」


 受け取ったグリーンは首を傾げてぺらぺらと本を捲る。


「この魔法書には反政府独自に作った魔法が書かれてるんだ」


 そう言うと、へえ、と感嘆の声を上げた。
 確かに凄いよな。新しい魔法を作るのなんて凄い時間がかかる事なのに。


「それで、これを覚えればいいのか?」

「そうそう。今回使うかもしれないのはこれ。で、呪文はこれだ」


 ページを開いて、文を指さす。逃走ルートに使うかもしれないから、今日中に覚えてもらわないと困る。まあ、グリーンは記憶力がいいから、直ぐに覚えられるだろう。
 そう思っていたら、ふと、グリーンの視線が本を見ていない事に気付いた。


「どうかしたか?」

「お前のそれ、魔法具か?」


 それ、と左耳、正確には左耳に付けられたカフスを指さされる。オレは、ああ、と答え半ば無意識にカフスを触った。カフスに彫りこまれた模様を指に感じた。
 何故そんなものを付けているのか、と問いかけてくるグリーンの目線に、なんと説明しようかと少しだけ迷った。


「“過ぎた力は身を滅ぼす”」

「?」


 一度肩を竦め、なんでもないように苦笑しながら返事を返す。


「そう言われたんだよ。オレ、年の割に魔力が高いんだってさ」


 魔力は使えば使うほどに増えていくものだ。でも、どこまでも増える訳ではない。個人差はあるが限界があるのだ。最初はどんどん増していくが、だんだん増し方が緩やかになり、最後には増えることはなくなる。なので、大抵魔力が強いのは大人が多い。

 オレの言葉に納得したのか、グリーンは、そうか、と一言言い、それ以上追及しなかった。

 それにならって、明日の予定を頭の中で組むことにした。


 今日はカントー中央軍部まで移動。作戦開始は明日の夜。同日に行動を起こそうとしている者達の存在を、彼らはまだ知らない。




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