番外編・蓋を開けたら
□1章 小話・番外編
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寝場所
「おいレッド、お前どこで寝るんだ?」
オレがベッドを占領してしまってはいるが、てっきり妙に温かいこの部屋で寝ると思っていた。
毛布を引きずって部屋を出て行こうとするレッドに声をかけると、やつは「ん?」と首を傾げた。
「何処って、リビングだけど」
「この寒いのに?」
「暖炉あるから大丈夫だって。ソファもあるから、そこで寝れば風邪はひかないだろうし」
ソファと暖炉もあるのかこの家は。
無ければ寒いのだろうが、普通の一般家庭にはそうそう揃ってはいないだろう。
「この屋敷の規模はどうなっているんだ…」
「え?普通じゃないのか?」
レッドにとっては普通らしいが、明らかに普通ではない。普通の家にこれだけの物が揃っているはずがない。
「じゃ、オレは下に居るからな!何かあったら床に何か落としてくれ!」
片手を上げて、騒がしく部屋を出て行くレッドを見送る。最後の言葉は今だ上手く動く事が出来ないオレへの配慮なのだろうが、どうしろというのだ。
この部屋にあって、尚且つすぐ手に取れる物へ視線を向ける。そこにあるのは、見事な細工の施された時計。
「(こんな物、落とせるはずがないだろうが…)」
知らず知らずのうちに溜息を吐いた。…何事もないことを祈ろう。