小説・蓋を開けたら

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 レッドは女性と向かい合う形で座り、グリーンは言われるがままレッドの隣に腰を落とした。数秒もしないうちに襖越しに声がかかる。部屋に居た女性がその声に入室の許可を告げれば、静かに襖が開く。どうやらお茶を持ってきたらしい別の女性が、自然な仕草で3人にお茶を指し出た。
 お茶を持ってきた女性が一礼して襖と閉め一拍置いたあと、レッドの前に座る女性が彼に気安げに話しかけた。


「お久しぶりですね」

「うん、久しぶり」


 と言っても、今日の目的は情報交換ではないためあいさつ程度だ。
 あいさつを終えると、女性は今日の本題、グリーンへと向き直った。


「初めまして、私はエリカと申します。赤から話しは伺っておりますわ」


 一体レッドが何を話したのか分からないため、グリーンは「初めまして」とだけ答えた。
 それに怒った様子はないものの、あまりいい顔はしていない。内心焦ったグリーンだが、それは杞憂に終わる。エリカが仕方なさそうに笑ったからだ。


「…せっかく、赤の本名はともかく、あなたの本名は分かるかもしれないと思ったのですがね…」


 偽名のこと、何も聞いていらっしゃらないようでしたし、と続いた言葉に、グリーンは隣に居るレッドを睨みつける。


「おい」

「わ、悪い…!すっかり忘れてて…」


 バツの悪い顔をして謝っている様子を見て、エリカは小さく笑った。


「ふふ、仲がよろしいのですね。幼馴染、との事でしたわね」


 助け舟、ではないのだろうが、投げかけられた言葉にレッドは嬉々として喰いついた。


「そう!緑(りょく)とは結構長い付き合いなんだ!」


 確か5年くらいだよな、とレッドがさり気なくグリーンの偽名を教えながら尋ねれば、未だににらみを利かせていたグリーンは、仕方ない、と言った様子で話しに乗ってきた。


「ああ、会ったのが8歳のときだからな」


 2人は今年で13、正確にはレッドは既に13歳の誕生日を迎えているので大体5年の付き合いになる。存外長いものだ。
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