小説・蓋を開けたら

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 レッドにより案内された場所は、タマムシの中でもかなりの大きさを誇る屋敷だった。


「ここか?」

「おう。…カントーにいる情報提供者の1人だ」


 その言葉に驚き動きを止めたグリーンを横目に、何の気負いもなく屋敷のドアノックを3回たたいた。
 すると、着物の女性がそれほど間を置かずに現れた。


「赤(せき)様ですね。お待ちしておりました」


 どうぞこちらに、と促され入っていくレッドの後を、グリーンは混乱しながらそれに続いた。
 赤という名が気になったが、何らかの理由で偽名を使っているのだろうと解釈し、ひとまずは口を噤むことにした。

 3人の間に会話は無い。案内の女性もそれに続く2人も、綺麗に磨かれた渡り廊下を音もなく進むので、廊下には何の音も響かない。時折、遠くからこの家の者が何らかの作業をする音が聞こえたり、外の音が聞こえてくるくらいだ。
 手入れが施された庭を眺めながら歩いていると、先頭を歩いていた女性が立ち止った。
 着いたのは離れの部屋だった。
 女性が襖越しに中に居る人物に声をかける。


「お連れいたしました」


 中の人物が何を言ったのかは聞き取れなかったが、この部屋に通すよう返事が返ってきたのだろう。ここまで案内をした女性が正座をし、丁寧に襖を開けた。声をかけると同時に、腕を使い中に入るよう促される。


「お入りください」

「ありがとうございます」


 お礼を言い、中に進む。
 部屋にいたのは、美しい着物を着たショートカットの女性だった。
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