小説・蓋を開けたら
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ばたばたとした足音が近づいてくる。エリカは何事かと立ち上がり、2人もどこか緊張した面持ちで襖を見やった。
「失礼します!」
「何事ですか?」
「軍のかたがお見えです!」
軍、という言葉に2人が明らかに反応した。びくりと身を震わせたのはブルーで、グリーンは身を固くし目線を鋭くする。
そんな2人を一瞥し、エリカが姿勢を正し凜とした顔を見せる。
「分かりました、直ぐに参ります、とお伝えください」
「は、はい」
来たとき同様、ばたばたと駆けて行く足音を目で追いながら2人を視界の端に捉え、どうしたものかと考えを巡らせる。
2人は未だ身を固くしたま家臣が去っていった方向を睨み続けている。軍人がこの屋敷まで来たということは、外では既に大勢の軍人によって捜索がされているだろう。ただでさえこの2人は軍から逃げるのなど初めてだというのに、そんな状態で2人が無事に逃げ果せることは難しい。
「(かと言って、この屋敷に留めておくのは危険…)」
表向きは忠誠を誓っているがゆえに、捜索が入るだろう。この屋敷に無事逃げ込む事が出来れば、ここ以上に安全な場所は無いと考える者が多いからだ。
どうしようかと冷静とは言えない頭で考えていたときだった。