小説・蓋を開けたら
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シルバーの手当てが終わり、全員が落ち着いたのを見計らい、グリーンが口を開いた。
「まず、連れていかれて何をやったか、もしくは、やらされたのか」
暖炉の炎が不定の感覚でパチパチと燃え上がる。
真剣な表情で問いかけてくるグリーンに、自然と2人の表情も引き締まった。
話し始めたのはブルーだった。思い出すように真剣な顔で視線を宙に彷徨わせ、それでもしっかりとした口調で言葉を紡ぐ。
「…連れていかれて、まずやらされたのは魔力の性質と魔法がどれくらい使えるのかっていうチェックね」
ブルーの話しはこうだった。
まず、特殊な機械で自身の魔力の性質がいったい何なのかを調べられる。
魔力の性質というのは、その人の持つ魔力を簡単に属性分けしたものだ。その人の一番使える、使いやすい魔法の種類を調べるのに大変役に立ち、また、その性質により苦手な魔法も分かる。
ブルーの性質は水が一番強く出ていたらしく、苦手とするのは植物関係らしい。そのあとは自分の性質の魔法がどれくらい使えるかをテストされたと言う。
「アタシは優秀だったみたいで、すぐに部屋に通されたの」
だが、そのテストで軍側が満足のいく結果で無かった場合「実習所」と呼ばれるところに連れて行かれるらしい。
「アタシはそこに入った事無いからよく分からないけど、実習所から移ってきた子が言うには、練習とは名ばかりで実際は…魔法を使った実践戦闘、だったらしいわ」
死んだ子もいるらしい、とブルーの表情が翳る。
軍に対しての強い憤りが思い出されたのだろう、俯いて唇を噛む彼女に代わりシルバーが話しを引き継いだ。
「オレも最初は同じだ。実習所には入れられていない。テスト後、すぐに姉さんがいた部屋に入れられた」
シルバーは、氷の性質が強く出たのだと言った。
ブルーの水とシルバーの氷、といったように、相性で相乗効果が出そうな者同士を同室にしていたらしい。
「その後は大体2対2で実戦練習だ」
やることが実戦練習だった理由はなんとなくわかる。魔法は使えば使うほど強くなるが、使い手が未熟では意味が無い。どれほど膨大な魔力だとしても、使いこなせねば宝の持ち腐れだ。そう言った意味では、実戦は一番力になるからだろう。
「…アタシたちは特に何も言われなかったけど、殺しを強制されていたチームもあるらしいわ」
この台詞をシルバーに言わせたくなかったのだろう、俯いていた顔を上げ、強い口調で事務的に言い上げたブルーの瞳には嫌悪や憎悪が見て取れた。
「実戦以外では魔法や魔法具の勉強や、個人での魔法レッスンだ」
「たまに、魔力値を測られたりもしたわ。…それが向こうの決めた合格ラインを上回っていなかったら“実習所”行きよ」
魔力値とはその者の魔力量を数字化した値のことだ。
その時々、体調や精神状態によって左右されるため絶対ではないが、その数値を基準に考える者は多い。