小説・蓋を開けたら
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「つまり、軍がしているのは屈強な魔法使いの育成か?」
メモを取りながら話を聞いていたグリーンが、説明された事柄をまとめ、軍の目的に一番近いと思われる推測を口に出すが、どうやら違うようだ。
ブルーが少し身を乗り出し話し始めた。
「それがどうも可笑しいのよ」
まるで内緒話でもするかのように声のトーンを落とす。
「当然、あそこにはアタシより歳が上の人たちもいてね、軍人になれる歳になっても、正式に軍に入れられなかったのよ」
グリーンが眉を寄せた。確かにおかしい。軍に入れさせるのでなければ、何故子供を集め、手間暇をかけて教育するのか。実戦訓練も軍に入れさせるわけではないなら、必要ではないはずだ。
ブルーも同じように眉を寄せ、小首を傾げながら話しを続けた。
「で、気付いたらどこか居なくなっちゃってたの。荷物も何も無くて、最初からいなかったみたいに」
ブルーは、最初は別の軍部に移動されたのかと思っていたが、調べても何処にもいる様子が無く、さすがに気味が悪くなったと言った。
「シルバーが来てからは手伝ってもらって探したんだけど、本当にどこにもいないの」
軍に入ったわけでも、移動したわけでもない。死んだのであれば、そこの軍部内で子供たちの噂になるだろうがそれもない。ならばその子供たちは何処に行ったのか。…軍はなんのために子供を集め、育成しているのか。
全員が難しい顔を作り思案する中、1人大きく息を吐き、声を上げた者がいた。
「なぁ、その子の行方は置いといて、次の話し聞いてもいいか?」
確かにこれ以上考えても答えなど出ないだろう。確かに真っ当な意見なのだが、よくこの空気の中でその意見を出す事が出来たと、ある意味関心だ。
「…それもそうね」
同意を声に出したのはブルーのみだが、他2人も同じ意見であるのは見れば明らかだった。
レッドは、ほっ、と息をつき質問を再開した。
「じゃあさ、明日帝王軍部移動した後何があるのか知ってるか?」
「…質問したけど、はぐらかされて何も聞けなかったのよ。唯一分かったのは、これは王様直々の命令ってだけ」
そのあたりの事は資料に書かれていなかったの?とブルーは続けたが、あいにくレッドの耳には入っていなかった。
それというのも、彼の思考は“王様直々”という言葉で埋め尽くされているからである。その言葉には嫌な予感しか生み出されない。
レッドは3人が自分に注目しているのにも気づかず、険しい表情で奥歯を噛みしめた。
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