小説・蓋を開けたら

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「ここ、どこの邸宅?」


 移動魔法の際に起こる明光が収まり、最初に目にした光景に対するブルーの第一声だった。


「え?オレの家だけど?」


 なんでもない事のように言うのは、この家の主たるレッドだ。彼は既に台所で飲み物を入れていた。
 もう一人、この家に慣れているグリーンはと言うと、その見事な細工の施されたソファーになんでもない様に座り(実際なんでもないのだろう。慣れとは恐ろしいものだ)、対で作られたのだろう、同じような細工の施されたテーブルに筆記具を並べている。質問・返答をまとめる準備は万全だ。
 そんな居住人に着いていけず、ぽかん、とその場に立ち尽くしていた2人を見て、片手にティーセットを乗せたトレーを乗せ、もう片方に救急箱を持ってリビングに入ってきたレッドが不思議そうに首を傾げた。


「遠慮なんてしないで座っててよかったんだぜ?」


 そういう問題ではない事を彼は気付いていないらしい。
 ブルーは何か言葉を紡ごうとして開けた口を閉じた。何を言っても意味が無いと悟ったようだ。先ほどまでの自分の心境が馬鹿らしくなったのかがっくりと肩を落とし、自分の隣で同じように立ち尽くしていたシルバーの手を引き、テーブルを挟んだグリーンの前、軽く5人は座る事が出来るであろうふかふかの長ソファーに腰を下ろした。
 いつ入れられたのか、暖炉の炎がパチリと跳ねた。
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