小説・蓋を開けたら
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その間にも、グリーンの説明は続く。
曰く、シロガネ山ふもとにある出入り口を、ある程度ならば中に入っても問題ないとのことだ。でも、入りすぎると迷宮に変わるのだと言う。
「迷宮は結界だ。山道と同じく、入れる者は山によって選ばれる」
誰が何のために張ったのか分からない結界。
レッドが住みついたときには既に存在していたらしい、とグリーンは言った。
「つまり、山道も結界だということか?」
「おそらくな」
もしこの結界を張った人が同一人物だとしたら、その人は信じられない力を持っていたのだろう。恐ろしいまでに常人離れした魔力の持ち主だったに違いない。
「山を自由に行き来するためには、選ばれた者の案内でふもとから山頂、もしくはその逆の片道を歩く必要がある」
「だから裏道じゃなくて洞窟だったのね…」
「ああ」
納得して首を縦に振っていると、グリーンがまだ説明を続けているのに気付いて、耳を傾け直した。
「本来ならこれはレッドの役目だ」
「ああ、レッドが選ばれたのよね。…何が基準なのかしら?」
「それは分からない」
「…それもそうよね」
分かっていたら、山に入ってこれる人がもっと増えていてもおかしくないもの。
「あれは…人、か?」
シルバーが小さな呟きが反響する。
「この洞窟は鉱物が取れるからな。発掘者がよく出入りしている」
グリーンの言うとおり、壁を慎重に掘っている作業服を着た人が点在している。皆一様に真剣な面持ちで、何も知らなければとんでもなく異様な光景だ。