小説・蓋を開けたら

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 エリカに裏道の使用許可を貰えてよかった、とレッドはひとりごちる。
 裏道はハナダシティに繋がっており、レッドの目的地である場所はそこから目と鼻の先だ。本当ならばカスミに挨拶くらいして行きたかったというのは本音だが、時刻は既に夕刻だ。挨拶は遠慮した方がいいだろう。

 現在レッドはハナダシティを北に走っている。走っていることに深い意味は無い。強いて言うのなら、橋に居るカップル達の邪魔をしたくない、と言うところだろうか。なんというか、ラブラブすぎて居たたまれない。

 風と一体とはまさにこの事を言うのだろう。周りに茂る木々や雑草が、彼の視界から流れるようにフィードアウトしていく様はいっそ見事だ。当人にとってはいつもの事で、流れる景色に何を感じるでもなく、ひたすら前へと駆けて行く。
 そんな人物の前に、何か生き物らしき物体が飛び出してきた。


「うわぁ!?」


 反射的に止まろうとするが急に止まれるはずもなく、バランスを崩し転んでしまった。
 が、そこはレッド。いきなりのこととはいえ、無意識のうちに受け身を取ったためダメージなどなく、無傷だ。


「いてて…」


 実際は全く痛くないのだが、なんとなくノリで呟き、飛び出してきた生き物らしき物体を見やった。


「…魔獣?」


 レッドの呟きに答えるかのように、その生き物、黄色い体躯をした魔獣が「ピカ」と一声鳴いた。
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