小説・蓋を開けたら

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「わわわ、もう来てるかな?!」

「待って!」


 チュチュと共にマサラに向かって走り出したイエローを呼びとめる声。その声の聞こえた方へ振り向けば、そこには笑みを湛えた青年が立っていた。
 チュチュが戸惑ったようにきょろきょと視線を彷徨わせる。


「えっと、」

「ああ、ごめん。驚かしちゃったかな?」


 あくまで笑顔で話す青年をイエローは不思議そうな顔で見る。会ったことは無いはずなのだが、青年の親しそうな態度が気になった。
 どう対応していいのか分からず、首を傾げていると、青年の方から話しを切り出した。


「初めまして。僕は、頼まれて君を迎えに来た者だよ」

「え!?そうなんですか?!」


 にこにこと笑顔の青年に、イエローは驚きの声を上げる。と同時に、親しそうな態度に納得した。おそらく、自分の容姿を博士から聞いていたのだろう。
 そう、イエローは今日から、博士の知り合いであり、孫であるグリーンの幼馴染にあたる人の家にお世話になる予定だったのだ。少々難のある場所らしいが、軍人には絶対に見つからない、と言われている。他にも、自分より年上だが、女の子がいると聞いて安心しているのだ。
 イエローは1人っ子であるため、お姉さんに憧れていたりする。


「そ、そうだったんですか!すみません、ちょっと、寝過ぎちゃって…」

「いや、大丈夫だよ。さあ、行こうか」

「はい、きゃ!!」

「な?!」


 青年が差し伸べた手を取ろうとした瞬間、バチリと電気が走る。両者が慌てて手を引き、反射的に距離を取ったその間に、小柄な黄色が割り込んだ。


「え?ピカ?」


 その黄色にイエローはきょとんとした声を上げた。




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