小説・蓋を開けたら
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寝てしまい、どうしようとも起きる気配の無いイエローを背負い、一先ずオーキド邸へと戻る。
この子の親も心配しているだろうし、何より癒しの力の持ち主だ。今日自分たちが迎えに来た子である可能性が高い、と話し合った結果だった。
背負われたイエローを見て驚いたオーキドに、詳しい経緯を話せば、案の定この子がそうであったことに、ブルーが喜び、それと同時に助けるのが間に合ったことに安堵した。
未だ起きないイエローの麦わら帽子を取り、流れるように落ちてきた、1つに結われた金の長髪を見て、レッドが固まった。
「………!?」
「…何驚いてるのよ」
不可解そうな色を乗せ発せられた言葉に、レッドは油の切れたブリキの人形のような動きで、ブルーを振り返る。
「いや、だって、おん…?!」
「博士の話しを忘れたの?」
隠すことなく、呆れを全面に出してブルーが告げる。呆れかえっていると言っても問題ない。
「通信で、博士が女の子だって言ってたじゃない。この子がイエローなんだから、女の子なのは当たり前でしょ?」
言われてみればその通りなのだが、麦わら帽子の効果か、レッドが鈍いだけなのか。オーキドに言われていたことが、すっかり頭から抜けてしまっていたらしいレッドは、イエローを男の子と疑っていなかったようだ。
「そんなことより、博士。イエローは大丈夫なの?」
穏やかな寝息をたてて眠るイエローを覗き見て、ブルーはオーキドに尋ねた。外傷はないようだが、戦うことが出来ないと聞いていたので、今回のことも経験の無い事だろうと推測し、それを心配しての言葉だった。
「急に寝てしまったのは癒しの力を使った反動じゃろう。そこまで心配せんでも大丈夫じゃよ」
癒しの力は使った後何らかの反動がある。イエローは、反動として急激な睡魔が襲うのだ。
そう説明されても、ブルーは心配そうな雰囲気を崩さない。それは、いつの間にか復活していたレッドも同じだ。
「使ったって言っても、レッドが木に引っかけた傷を治しただけなのよ?」
「それはイエローが疲れていたからかもしれんな。イエローは争い事とは離れた生活をしておったからのう」
「…そう」
そう呟いて、ブルーはイエローの顔にかかっていた髪を横に避けた。